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円安加速と日銀の国債買入れ増額

| 中央銀行・金融情勢・提言編 | 日本 | 欧州 | 為替編 | 米国 | ドル(円) | 2022年4月21日 |

円安加速と日銀の国債買入れ増額

 4月20日にワシントンでG20財務相・中央銀行総裁会議が行われ、日本からは鈴木財務大臣と黒田日銀総裁が出席した。今回はオンライン参加したシルアノフ財務相らロシア代表団の発言時に米、英、カナダが退席するなどロシア批判一色となり、共同声明も見送られた。

 ただ会議の合間にイエレン財務長官と鈴木財務相が会談しており、最近の円安加速に対して何らかの「注文」が出た可能性がある。米国にとっても急激な円安(ドル高)は好ましくないからである。

 円相場は日本時間20日の午前中に一時1ドル=129.40円と2002年5月以来の円安となり、3月8日のNY終値である1ドル=115.66円から11.9%の急落となった。この3月8日とは、ロシアのウクライナ侵攻(2月24日)を受けて世界的な株安、原油高(一時1バレル=129ドル)、ルーブル安(一時1ドル=158ルーブル)がピークとなり、そこから反転した日である。

 ちなみに同じ3月8日のNY終値から20日の最円安までの円の下落幅は、対ユーロが126.10円から139.68円まで10.7%、対豪ドルが84.11円から95.74円まで13.8%、対ポンドが151.50円から168.42円まで11.1%、対人民元が18.27円から20.16円まで10.3%と、要するに円の「独歩安」である。

 円が20年ぶりの安値となった20日は、夕方からNY時間にかけて1ドル=127.46円まで「反発」したが、本日(21日)の東京時間ではまた1ドル=128.60円まで押し戻されている。海外発ではなく日本初の円安のようである。

 その円安加速の主要な理由は、世界的な利上げと(主に)長期国債利回りが上昇する中で、日銀だけが国債の積極買入れで利回り上昇を抑え込んでいるからである。

 20日にも日銀はほぼ全年限の国債買入れに加えて5~10年国債の指値オペを発動し、1日で1.6兆円も買入れて国債市場全体の利回りを押し下げた。また21~26日に連続して指値オペを行うとも発表している。こうなると10年国債利回りの「上限」は0.25%となり、3月上旬からの利回り上昇は0.1%程度しかない。

 これに対して米10年国債利回りが3月上旬の1.7%台から2.9%台へ1.2%程度、ドイツ10年国債利回りも同じくマイナス0.1%から0.9%台へ1.0%程度それぞれ上昇している。これだけ「金利差」があり、かつもっと拡大しそうなので円安が止まらないことになる。

 さて政府関係者からも「悪い円安」を懸念する声が上がる中で、なぜ日銀はここにきて国債買入れを増額して円安を加速させているのか?

 これは「円安を加速」させるためではなく、日銀保有の国債残高を急激に減らさないためである。日銀保有の国債残高は2021年2月末の539兆円をピークに減り始めているが、これはマイナス利回りで「持っているだけで損」となる短期割引国債の残高を減らしているからである。日銀保有の長期国債残高は(日銀は短期割引国債を除く利付債は残存年数に関わらずすべて長期国債と呼ぶ)2022年2月末の516兆円まで増加していた。

 ところが2022年3月末の長期国債残高は511兆円と「初めて」月間べースで減少した。2022年3月とは連続指値オペを含む日銀の国債買入れが2月までより1兆円以上多い6.7兆円だったにもかかわらずである。

 その理由は日銀の「異次元」量的緩和が2013年4月から始まり、それまであまり買入れていなかった残存年数9~10年の国債を「異次元」に買入れるようになり、その9~10年国債の「大量償還」が始まったからである。                                                                                                                           

 世界の中央銀行はテーパリング(新規買入れの縮小)と利上げに踏み切っているが、総資産縮小はFRBが5月からスタートするもののまだ実際に縮小している中央銀行はない。このままだと日銀が世界で最初に総資産が縮小する中央銀行となってしまう。日銀は3月に国債買入れを1兆円、貸付けを7兆円増加させて、やっと総資産を5兆円増加させた。

 やはり日銀がFRBに先行して総資産を縮小させるわけにはいかない。そのため「総資産を縮小させないため国債買入れを増額し、結果的に国債利回りが低下して円安が加速している」ことになる。

 日銀の総資産を縮小させないための「やりくり」は続くことになり、円安もまだまだ続きそうである。

2022年4月21日

The Stray Times(有料版)の予告   156回目

| 有料版記事予告 | 2022年4月17日 |

The Stray Times(有料版)の予告   156回目

 4月18日(月曜日)夕方に予定通り更新します。以下、予定内容です。

1 特別特集  世界の金融政策正常化と金融市場の動き

 ここ2週続けて「FRBの総資産縮小開始」の金融市場に与える影響について書いたので、今週は「もう少し」視野を広げて世界の金融政策正常化(利上げと量的緩和縮小・停止・総資産縮小)と国際政治の金融市場に与える影響について考える。

 現在の世界は、未曾有の超金融緩和が長期化した結果としての物価上昇加速と、ロシアのウクライナ侵攻による政治の分断の中で、金融市場の「新たな均衡点」を探すという前例のない難局である。これまでの常識がそのまま通用するとは考えないほうが良い。

 今週も「出来るだけ多方面」から、前例のない難局に対応したい。

2  今週の「注目すべき」銘柄   ツイッター

 イーロン・マスクによる全株取得と非公開化が4月14日に明らかになったツイッターを取り上げる。最初から敵対買収となるだけでなく、あのマスクと言論の自由という「およそ釣り合わない組み合わせ」となるツイッターである。

3  お勧め「書籍」コーナー

 新刊本から選んでご紹介する。

2022年4月17日

最新有料記事サンプル


2022年5月23日配信分
今週の「警戒すべき」銘柄   楽天グループ

今週の「警戒すべき」銘柄   楽天グループ

 まずあまり関係がなさそうな話から始める。

 先週末(5月20日)に発表された4月の全国消費者物価指数は、総合で前年同月比2.5%上昇(3月は同1.2%上昇)、除く生鮮食料品では同2.1%上昇(3月は同0.8%上昇)と、消費税上げの影響を除くと2008年9月以来…


2022年5月23日配信分
特別特集  米国株はまだ下がるのか、そろそろ下げ止まり反発するのか?

特別特集  米国株はまだ下がるのか、そろそろ下げ止まり反発するのか?

その1  最初に問題提起

 米国株を中心に考える理由は、依然として米国株の動きが世界の株価に大きな影響を与えているからと、米国の物価、経済活動、企業業績、金融政策等が株価に与える影響が比較的「理論通り」だからである…


2022年5月23日配信分
お勧め「書籍」コーナー

お勧め「書籍」コーナー

 今週は百田尚樹氏が書いた「最初のミステリー」が文庫化されたタイミングでご紹介する。実は百田氏の作品は「日本国紀」が同じように文庫化されたタイミングで読んだだけである。

 このコーナーでもご紹介した日本通史であるが、ところどころ創作が入っており、歴史書なのか歴…