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早々と西川(さいかわ)CEOを辞任させて蓋をした日産自動車

| 個別企業編 | 日産自動車 | 2019年9月10日 |

 この表題には「主語」がない。つまり「誰が」が西川CEOを辞任(実質的には解任)させたかによって、日産自動車の今後が決まることになる。

 ちなみに本誌はゴーン被告は「真っ黒」であり、そのゴーン被告とルノー本社に忠誠を誓うだけで(つまり日産自動車を率先して食い尽くして)CEOの座を手に入れ、結局のところゴーン被告を正義のためではなく自分の地位の確保のためだけに東京地検特捜部に売り渡し、(規模こそ違うが)同じような不正まで働いていた西川CEOも「その次に真っ黒」であると考える。

 西川CEOが、自らが受け取る報酬を不正に水増ししていたことが発覚した9月4~5日から、週末をはさんだだけの9月9日の取締役会では、早くも同CEOが16日付けで辞任すると発表された。

 直接の原因となった西川CEOの不正は、2018年11月19日にゴーン会長(当時)とともに逮捕されたケリー代表取締役が、「文芸春秋」7月号(6月10日発売)のインタビュー記事で「西川氏に日産自動車社長の資格はない」と断言するとともに、具体的に暴露していたものであり別に目新しいものではない。

 しかも当時は、他のマスコミが殆ど取り上げなかった。それがここにて(9月4~5日になって)一斉に各社も報道するようになっていた。それでも西川CEOの辞任にまで言及したものは殆どなく、同CEO本人も当日(9月9日)朝の段階まで、自分が辞任する(解任される)などとは夢にも考えていなかったはずである。

 9月9日午後から開催された日産自動車の取締役会は数時間に及び、終了後に独立社外取締役で取締役会議長の川村康氏(元JXTGホールディングス会長)が、「社内(日産自動車)としては大きな節目を迎えており、早く次の世帯にバトンタッチすべきと考えた」との理由だけで西川CEOの辞任を発表した。そこでは同氏の不正な報酬のかさ上げとの関係などにはほとんど触れていなかった。

 それに合わせて本日(9月10日)、ゴーン被告らの不正な報酬が350億円にも上るとの「唐突な」リーク記事が出ており、同時に東京地検特捜部も早々と西川氏の刑事責任を追及する意思がないとの噂も流れている。

 ここからは、西川氏の不正な報酬かさ上げを理由として(先述のようにこの事実はケリー被告によって6月10日に暴露されていた)、今後のルノーあるいは(いったんは破談になったとされるが水面下では交渉が続いている)フィアット・クライスラーとの交渉を少しでも有利にするため、経営能力のない西川氏に早く引導を渡しておく必要があったことになる。

 西川氏に対しては刑事責任を問わないことを条件に引導を渡したわけであるが、実際には「さっさと辞任しないとゴーンと同罪でしょっぴくぞ」くらいに恫喝したはずである。

 ここで冒頭の「主語」であるが、権限だけは持たされた形にはなっている社外取締役中心の取締役会にそんな度胸などあるはずがなく、かといってルノー出身の取締役も本社と十分にすり合わせる時間すらなかったはずである。

 ゴーン被告という「重し」が取れた日産自動車は、2019年4~6月期の営業利益が前年同期比99%減のわずか16億円であった。このまま西川氏に日産自動車のかじ取りを自由に任せておけば、今期(2020年3月期決算)は大赤字となり、ルノーとの経営統合でイニシアティブをとるどころか、そのルノーにまでそっぽを向かれて路頭に迷うことになってしまう。

 ここまでくると「主語」の答えは1つしかなく「官邸」ということになる。実際に現在の官邸を牛耳るには経済産業省であるが、本日早くも(西川CEOの辞任には)経済産業省の意向が働いていたとの噂が流れている。確かに安倍政権にとっても日産自動車が再び経営危機に陥る事態は大変に困るため、官邸を牛耳る経済産業省(そのトップが今井首相秘書官)が先に動いたと考える。

 官邸の意向となれば、検察庁(東京地検特捜部)も西川氏の刑事責任を追及しないとか、ゴーン被告らの不正額は350億円などのリークをタイミングよく流すことになる。

 ここまでのところ「真っ黒」なゴーン被告や、「その次に真っ黒」な西川CEOが放逐されることは大賛成であるが、このままだとルノーに対しても「不正だらけで大赤字の(になるはずの)日産自動車などとの経営統合はできない」との口実を与えてしまうことになる。もちろんルノーの本音は「もう日産自動車は十分に食い尽くしたので、早く持ち株(議決権の43.4%)の大半を売却して資金化し、フィアットなど欧米大手との再編に舵を切りたい」となる。

 それはそれで悩ましい問題ではある。とりあえず10月末を目途に選任される西川氏の後任CEOの人選が気になるが、ここまでの流れからすると「官邸の覚えがめでたい官僚か学者か銀行出身者」となってしまい、いよいよ本格的に日産自動車は危機を迎えることになる。

2019年9月10日