| 中央銀行・金融情勢・提言編 | 経済編 | 中国 | 中国 | 2022年1月19日 |
2021年の中国経済
中国のあらゆる経済統計の発表は「異常に」早い。2021年10~12月期のGDPも1月16日に発表され、従って2021年の年間統計も発表された。2021年の物価統計や貿易統計などもすでに発表されている。
だいたいあんな広大で人口も多い中国の各経済統計が、その期が終了した約2週間後に発表できるはずがない。そこは共産党(習近平)独裁の中国なので最初から答え(落としどころ)が設定されているはずで、確かに数字をよく見せるための工夫は凝らされている。
「せっかく」なので、中国国家統計局が発表した各統計を見ていきたい。
まず2021年10~12月期実質GDPは「前年同期比」4.0%増となっている。同年7~9月期が同4.9%増、4~6月期が7.9%増、1~3月期が18.3%増だったので、確かに中国経済は「減速中」である。
ただこれらの数字は「前年同期比」なので、日米が使う「前期比年率換算」とはかなり印象が違う。この「前期比年率換算」は発表されないが、2021年10~12月期は1.2%程度、高い成長率となった1~3月期でも2%台半ばで、2021年通年でも2%前後の成長率でしかなかったことになる。同じベースで計算する2021年通年の米国実質成長率は5%台を確保したはずである。
また中国の2021年の名目GDPは114兆3670億元と発表されており、日本の報道では2000兆円を超えたと報道されているが、2021年の平均人民元レートは1元=17.06円なので、正確には1951兆円である(ただし年末は1元=18.06円だった)。
ここで中国の2020年の名目GDPは101兆6000億元だったので、確かに2021年の名目GDPは「前年比」で12.5%増えている。
別途発表されている2021年通年の中国卸売物価指数は前年比8.1%と1995年以来の上昇率だったが、同じく消費者物価指数は0.9%上昇と逆に2009年以来の低水準である。
中国では消費者物価指数が急上昇すると天安門などの「事件」が起こるため、本年秋に共産党大会を控えた習近平が消費者物価指数だけ「大幅に低く」発表させているとも考えられるが、本当に0.9%上昇でしかないなら、卸売物価上昇を消費者に転嫁できない「日本型」に近い中国経済の停滞を意味する。
日本の2021年12月の企業物価指数(卸売物価指数のこと)は前年同月比8.5%の上昇であり、消費者物価指数が同0.5%の上昇でしかなかった状況と似てしまう。
中国の2021年の名目GDPに話を戻すが、国家統計局の発表する2021年の実質GDPは「前年比」8.1%増であるため、名目GDPの「前年比」12.5%増加との差は4.4%である。
これは何の数字なのか? 日本を含む先進国も「よく算出方法のわからない」GDPデフレーターを利用しているが、中国GDPに占める個人消費の比率は37%なので(日本は56%、米国は69%)、中国のデフレーターはより卸売物価指数の上昇率に近くなければおかしい。これも2021年の実質GDPを「高め」に見せる工夫である。
ちなみに中国GDPに占める「住宅投資を含む民間投資に政府支出と公共投資を加えた比率」は60%を超え、その大半が官民の不動産投資である。国家統計局が発表した2021年通年の不動産投資は前年比4.4%増でしかないが、1~9月では前年同期比8.8%増だったため、10~12月期は大幅マイナスだったことになる。また2021年通年の小売総額は前年比12.5%であるが、12月に限ると前年同月比1.7%増でしかない。
やはり2021年の中国経済は、とくに年末にかけて「大幅に」減速していたことになる。
中国の2021年の貿易統計(モノだけ)は6764億ドルの黒字、対米では3966億ドルの黒字とそれぞれ過去最大を記録した。何といっても中国経済はまだ「輸出」で稼げる。人民元の対ドルレートが高めに推移する中での「大幅黒字」である。
人民元の対ドルレートは2021年平均で1ドル=6.43元と2020年平均の6.90元から人民元高が進んでいる。これは米国の「為替操作国」認定を避け(実際に昨年末に見送られている)、輸入インフレを抑えるためのはずで、少なくとも日本よりは「まともな」為替政策である。本誌は中国でも「評価すべきところ」は評価する。
最後に中国の2021年通年の出生者数は1062万人と1949年の建国以来の低水準だった。14億人と言われる総人口に占める割合が1%を大きく下回っており、日本とあまり変わらなくなってきている。
2022年1月18日