北京オリンピック開幕と日本政府の対応
2月4日に北京オリンピックの開会式が行われる。一部の団体競技はすでに始まっており、各国から選手、役員、報道陣らが現地入りしている。
同じ都市で夏季と冬季のオリンピックが開催されるのは北京が初めてである。習近平は国家副主席時代の2008年に夏季オリンピックの大会責任者を務め、総書記となった2012年の翌年には冬季オリンピック招致に取り掛かり(2016年に開催決定)、総書記3期目を狙う2022年の開催となる。まさに習近平のためのロードマップであり、習近平の「威信」がかかるオリンピックとなる。
会場となる北京市と周辺の河北省は、冬季は厳しい寒さとなるが雪がほとんど降らない。東京やロンドンで「無理やり」冬季オリンピックを開催するようなものである。会場では300基の大型降雪機をフル稼働させる100%「人工雪」の冬季オリンピックとなる。もちろん大量の電気を消費する。
習近平が「威信」をかけて開会式に招待できた各国首脳は25か国に過ぎず、「大物」はプーチンだけである。大半の欧米各国は政府代表を派遣しない「政治ボイコット」を明言しているが、日本は明言せず橋本聖子・参議院議員を派遣する。
また衆議院は2月1日に「やっと」新疆ウイグル、チベット、香港などの「人権状況」に懸念を表明する決議を行ったが、そこには「中国」も「人権侵害」も「非難」の文字もない。欧米諸国に合わせるためオリンピック開会式直前に決議したものの、中国政府を刺激しない中途半端な内容で、参議院の決議はオリンピック後まで「遠慮」する。韓国を非難できないコウモリ外交である。
また中国政府(習近平)は「威信」をかけてゼロコロナを厳守する。当然と言えば当然であるが、中国内では1人でも感染者が出ると街中や施設を長時間封鎖している。コロナさえ封鎖できれば、その過程で凍死者など犠牲者が出ても気にしない「中国式」である。
それより欧米主要国は選手、役員、報道陣に私用のパソコンやスマホの持ち込みを禁止し、新品を貸与して大会後には置いて帰るよう徹底している。各種情報の抜き取りを防ぐというより、そのまま各国に持ち帰ってしまうと連鎖的、継続的に情報が抜き取られる恐れがあるからで、国家安全の観点では「常識」である。
ところが知る限りでは、日本ではそのような措置がとられていない。
さて北京オリンピック期間中は、少なくとも国際情勢の緊張が一時「棚上げ」になると思われる。
ところがバイデンはプーチンの要求するNATOの東方不拡大を拒否し、2月1日には東欧に2000名の米兵派遣を命令するなど「前のめり」が目立つ。米国内の不人気を少しでも改善するためであるが、それだけ台湾や尖閣諸島を含む対中国のプレッシャーが弱まる。
また2月11日にはクアッド(日米豪印)外相会議、翌12日には日米韓外相会議、5月にはバイデン自身が来日してクアッド首脳会議が予定されているが、3月に韓国大統領選、5月までにオーストラリア上下院同時選挙が控えており、時期的に「結束」が難しいタイミングである。
特に要注意はオーストラリア同時選挙で、反中国のモリソン首相率いる与党が、親中となるはずの労働党に敗れれば(その予想が多く、当然に中国の工作も盛んに行われている)、東アジアの政治バランスが一気に崩れる。
つまり北京オリンピック後に東アジアを含む国際情勢が「一気に」緊張する恐れがある。すでにレームダック化しているバイデンの米国は頼りにならず、独自にでも習近平と対峙しなければならない日本では、肝心の岸田政権がすっかり親中旋回している。
先が読めない。
2022年2月3日