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官邸がおかしい!

| 官僚組織編 | 2020年2月15日 |

 2012年12月以来、7年強にわたり官邸の主である安倍政権であるが、ここにきてさすがに「見逃せない重大問題」が目立つようになってきた。

 安倍政権をここまで長期間安定させてきた最大要因が、2014年5月に設置された内閣人事局において官僚組織の幹部人事を実質的に差配するようになったことである。つまり安倍政権は内閣官房に設置した内閣人事局の幹部人事権を通じて官僚組織を完全に支配し、過去に類を見ない強大な政権を維持していることになる。

 しかし問題は、官僚組織の幹部人事権がどうしても官邸(具体的には安倍首相と菅官房長官)の「好み」と「事情」が優先され、さらにそこを忖度してうまく威を借りる「官邸官僚」が強大な権限を握ることである。

 そして現時点における最大の「見逃せない重大問題」とは、1月31日に発表された黒川弘務・東京高検検事長の定年の半年延長である。黒川氏は7年半にわたり官房長と事務次官を務め、官邸に最も近い存在であるとともに「官邸の守護神」と言われるように官邸の意に沿った決定を下し、2019年1月に検事総長の待機ポストである東京高検検事長となっている。

 その「官邸の守護神」の功績とは、小渕優子・元経済産業相の有権者へ贈賄事件や甘利明・元経済再生担当相の現金収賄をもみ消したことや、安倍首相自身が疑惑の対象となった森友学園や加計学園でも完全に火の粉を振り払ったことなどである。

 ところが検察官の定年は63歳と定められており、検事総長だけが65歳となっている。黒川氏は2020年2月8日に63歳となるため、2018年7月に検事総長となった稲田伸夫氏をそれまでに退任させなければならない。検事総長は(検事長も)天皇認証が必要であり、年が明けた段階で時間的に不可能となっていた。

 また検事総長人事は、その時の検事総長が次期検事総長を指名する慣習となっており、稲田検事総長の「意中の人」とは林真琴・名古屋高検検事長のはずである。林氏の定年は2020年7月30日なので、その時点で禅譲すれば稲田検事総長の任期も平均的な2年となる。

 そうなると当然に「官邸の守護神」である黒川検事総長の芽がなくなるため、官邸は黒川氏の定年を半年間延長させ8月8日としたわけである。さらに自動的に7月30日が定年となる林氏の検事総長の芽がなくなる「二重のメリット」となる。

 そもそも官邸は2016年8月に刑事局長だった林氏を事務次官とする法務省の人事案を蹴り、官房長だった黒川氏を強引に事務次官につけて2019年1月まで据え置いている。

 官邸とすれば、そこまで強引な手段をとっても「官邸の守護神」である黒川検事総長を誕生させる必要があることになる。

 ここで「見逃せない重大問題」が2つ出てくる。

 1つは、総理大臣でも誰でも逮捕・起訴できる検察官のトップ人事に、官邸がそこまで露骨に介入することの是非である。行政を司る官邸が検察組織のトップ人事にまで介入するなら、アフリカや南米の(韓国もそうであるが)腐敗政権と大差がなくなる。

 もう1つは、官邸は黒川氏の定年延長を国家公務員法の例外措置による定年延長を適用したとしているが、検察庁法ではその職務の性格から定年を厳格に定め例外措置を認めていない。

 これは集団的自衛権が憲法上認められるかといった「明確に規定されていない条文の解釈の問題」ではなく、「明確に検察庁法で定められている条文」を官邸が勝手に「変更」してしまったことになる。

 つまり行政を司る官邸が国会に帰属する立法権を侵害していることになり、日本は法治国家ではなくなってしまう。これは「ちょっとやりすぎ」といったレベルではない。

 つまり強大な権限を得た安倍政権の「驕り」の表れである。さすがに野党も元検事の山尾氏を中心に攻撃しており、もっと問題が大きくなるはずである。安倍政権発足以来、最大の「勇み足」であり、野党の覚悟次第であるが、今度こそ安倍政権の命取りとなる恐れがある。

2020年2月15日