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低レベルの政治ショーになり下がった東京オリンピック

| 官僚組織編 | 政治・政策提言 | 日本 | 2021年7月16日 |

低レベルの政治ショーになり下がった東京オリンピック

 東京オリンピックを巡る最近の一連の動きは、東京都知事選直後に始まった「条件を満たしていない無理筋の緊急事態宣言」「都民ファーストの公約をゴリ押しさせた無観客開催」「金融庁をスケープゴートにして逃げ切る西村大臣と菅首相」「早くもポスト菅を視野に二階幹事長、山口公明党代表、尾身茂氏らに根回しを完了させた小池都知事」と、きれいに一本につながる低レベルで国民不在の政治ショーである。

 ここで最も世間の批判を浴びている西村大臣発言の背景や、その後の「あきれる責任逃れ」から始めたい。

 4度目の緊急事態宣言発令を受けた7月8日、西村康稔・経済再生担当兼コロナ対策担当大臣が「営業時間短縮もしくは酒類の提供停止要請に応じない飲食店に対して金融機関から遵守を働きかける」と発言し、同時に「酒類販売業者に対して要請に応じない飲食店との取引停止を求める文書」も国税庁に配布させた。

 翌9日に記者会見で質問された菅首相は、何と「承知していない」と逃げてしまった。行政による民間の私権制限を伴う強権発動は省庁レベルでは不可能で、その最高責任者である首相が「承知していない」こと自体がありえない。

 ここで金融機関は金融庁に許認可権があり、国税庁は財務省の外局で酒類販売の許諾権がある。どちらも旧大蔵省時代からの権限であるが、当然に政府(官邸)の「指令」のもとに事務作業を行う。安部政権時代の2014年5月、官邸(内閣官房)内に内閣人事局が設置され、各官庁のトップを含む幹部人事を差配するようになった。しかしそこから各官庁(特に財務省、金融庁、経産省、検察庁など)の幹部人事に対する官邸(内閣官房)の過剰介入が様々な問題を引き起こす。

 検察庁では2020年7月に「官邸の意にそぐわない」林真琴・検事総長が誕生し、金融庁でも2021年7月に氷見野長官が1年で退任して中島淳一・総合政策局長が昇格するなど、トップ人事が官邸の過剰差配から「正常化」する動きが見え始めていた。当然に官邸は面白くない。

 そこで今回の西村発言(金融機関への指導)があまりにも評判が悪かったため、政府はすべてを金融庁主導として責任回避し、さらに就任したばかりの中島淳一・金融庁長官の責任問題に「すり替える」動きまで見える。官邸が各省庁トップ人事の主導権を取り戻すためである。

 そもそも西村発言は、菅政権の「最初からオリンピックは開催ありき」「コロナ感染拡大は飲食業界と酒類販売がすべての原因とする」「そのために緊急事態宣言を発令して法的権限を確保しておく」という究極の「辻褄合わせ」から出ている。

 昨日、東京都の新規感染が1300人を超えたが、オリンピック選手・関係者の入国水際対策がザルであるため、これからも急拡大する。また日本が開催を中止できないよう来日して見張っているバッハIOC会長はNBCしか怖いものはない。この段階で中止すれば(これも中止を前提とした交渉を全く行っていなかった政府、JOC、東京都の怠慢の結果)、IOCとNBCにそれぞれ1兆円程度の違約金を吹っ掛けられるが、それでも前年度のコロナ対策費が5兆円も余っているため(必要なところをケチっているので当然である)、そこから流用してでも(もちろん全関係者は責任を取る)国民の命を守るべきである。

 小池都知事だけは都議会選挙前まで「敵前逃亡」するなど、責任回避だけは怠らない。

 さて冒頭に書いたように、「緊急事態宣言」は7月4日に投開票された都議会選で「実質大敗」した自民・公明の与党が、来る衆議院選挙で大敗しないための究極の「辻褄合わせ」でしかない。だいたい医療体制崩壊の回避が大前提の「緊急事態宣言」であるが、その兆候はなかったはずである。尾身茂氏は年中「医療体制の崩壊」を叫んでいる。

 そして「無観客」開催は、もともと都民ファーストの公約であり、小池都知事は「公約のためだけに」橋本JOC会長との会談で一方的に通告したものである。確かに開催都市の首長としてはその権限があるかもしれないが、肝心の責任はすっかりお忘れである。

 そして小池都知事は都知事選直後に大急ぎで二階幹事長、山口公明党代表、尾身茂氏らと会談し、オリンピック終了後の(どうもパラリンピックは眼中にない)都知事辞任、衆議院選出馬への協力を取り付けている。さすがに無所属での出馬となるが、選挙区の東京9区には自民党系議員を出馬させないとの密約が二階幹事長との間にできている。

そしてオリンピック大失敗の場合は菅政権を引きずり降ろして首相の座を狙うという「悪夢でしかない」密約まで出来上がっているようである。ここで自民党総裁任期が衆議院議員任期より早く終了するが、衆議院選挙が行われるときは総裁選を2か月程度延期できる。これらのスケジュールは二階幹事長が決める。つまり小池都知事には、衆議院選に無所属で出馬して当選=自民党(二階派)入り=総裁選出馬という「最短かつ悪夢のスケジュール」が可能なのである。

いずれにしても菅首相や小池都知事を含むオリンピック関係者は誰も「自分に責任がある」とは全く考えず、実際に国民の命や飲食店の倒産なども全く気にせず、そこにあるものはIOCも含めた「自分のことしか考えない」どす黒い、低レベルの政治ショーでしかない。

オリンピック以外にも、深刻化する日本経済の落ち込みや対中国問題などが控えているが、そこも誰も気にせず当面は政治ショーに没頭することになる。

ここで僭越ながら菅首相に「提言」がある。

今すぐに「国民の命を守るために全責任を負ってオリンピックを中止して、同時に国民の信を問うために衆議院を解散して総選挙を行うべき」と考える。真摯に国民に説明して謝罪すれば「意外に人気回復」となり大敗は避けられるかもしれない。見張っているバッハIOC会長にも自分で説明して慌てさせればよい。少なくとも小池氏を都知事に縛り付けておくことはできる。このまま泥沼にはまり込んでいくよりも勝算があり、総裁再選の芽も初めて出てくる。二階幹事長は大反対するが「それがどうした?」である。

そして今度こそ国民のためにコロナ対策、経済対策、中国対策に取り組んで頂きたい。よく考えれば菅首相は就任以来、選挙に勝ったことがなく、国民に有益な政策を繰り出したこともなく、中国に強い態度に出たこともない。少しくらいは日本と国民のために汗をかいて頂きたい。

 

2021年7月16日

The Stray Times(有料版)の予告  117回目

| 有料版記事予告 | 2021年7月11日 |

The Stray Times(有料版)の予告  117回目

 7月12日(月曜日)の夕方に予定通り更新します。以下、予定内容です。

1,特別特集  また過去最高値を更新した米国株式市場と、強弱入り混じり始めた諸環境

 基本的に世界の株式市場最大の波乱要因は、「経済状況の変化」ではなく「政治情勢の混乱」であると考えて、先々週は日本、先週は中国の政治情勢を取り上げてきた。

そして今週は米国である。米国株式は先週末(7月9日)にまた過去最高値を更新している。ここで米国株式の反乱要因としては「政治情勢の混乱」に加えて「強弱材料が入り混じり始めた経済環境」も考えなければならない時期と考える。

 ここ3か月ほど、世界の株式市場のバブルは「あと6~12か月続く」との基本予想は変えてこなかったが、少しだけ調整開始時期を早める必要があるかもしれない。文中で考えていきたい。

2,今週の「一言加えたい」銘柄    メガバンク編

 常に割安に放置される日本のメガバンク(3社)を、海外主要銀行とも比較しながら解説する予定である(つまり変更する可能性もある)。
 
 
3,お勧め「書籍」コーナー

 珍しく現時点でご紹介する「書籍」が決まっている。

2021年7月4日

最新有料記事サンプル


2021年10月18日配信分
特別特集   円安を止めるべし!

特別特集   円安を止めるべし!

 円安が進んでいるが、このタイミングでの円安進行は日本をますます貧しくするだけの「非常に悪い円安」で、早急に止める必要がある。これまでも何度か書いてきたが、今週はこのポイントに絞って、過去の検証も加えて詳しく書きたい。

 その前に、先週(10月11~15日…


2021年10月18日配信分
お勧め「書籍」コーナー

お勧め「書籍」コーナー

 今週も、中国に関連する「書籍」である。地政学的に中国の脅威に最も晒されている国が日本であるため、中国の知識はいくらでも吸収しておかなければならない。

「米中対立」  佐橋亮・著  中公新書   1034円

 「アメリカの戦略転換と分断される世界」との副題が…


2021年10月18日配信分
今週の「一言加えたい」銘柄     「日本国」編

今週の「一言加えたい」銘柄     「日本国」編

 今週は、言い間違いでも考え違いでもなく「日本国」である。もちろん「日本国」は銘柄ではなく、企業組織でもなく、もちろん株式市場に上場しているわけでもない。

 しかし日本の財政を所管する財務省、主要マスコミ、それにカイル・バス(注)のよ…