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ヘッジファンドの巨人たち

| 投資家編 | 2019年9月25日 |

 ヘッジファンドとは、各種インデックスとの相対比較ではなく、「相場状況にかかわらず利益を上げる」ことを目的とする私募ファンドである。従って情報は多くは公開されておらず、また誰でもいつでも投資できるというものでもない。

 その運用スタイルも、最も多いものが株式市場で割安株を買い・割高株を空売りする株式ロング・ショート型(全体の約35%)、次いで世界中のあらゆる市場で投資機会を求めて参画するグローバル・マクロ型(約22%)、債券市場などで価格形成のゆがみを探し出しその修正にかけるアービトラージ型(約14%)、金融市場における「突発事故」にかけるイベント・ドリブン型(約10%)などがあるが、それらの混合型も多い。

 また最近はコンピューターを駆使したクォンツ型が増えているが、これは投資スタイルというよりも、「人間の目と経験」ではなく「プログラムされたコンピューター」が投資機会を探し出すところが違うだけである。

 そしてヘッジファンドにおける共通の特徴は、投資資金に何倍もレバレッジをかけて収益の最大化を図りながらリスクも限定する工夫もしていることと、何といっても運用報酬が「べらぼうに高い」ことである。基本運用報酬が投資額の年間2%、それに成功報酬が20%といったところが平均である。もちろん年間のパフォーマンスがマイナスであれば成功報酬は支払われず、そのマイナスを取り返してからでないと新たな成功報酬も支払われない。

 最近は「物言う株主」もヘッジファンドに分類されていることが多いが、それはレバレッジをかけながらリスクも限定する投資手法で、運用報酬も「べらぼうに高い」からである。日本でよく名前の出てくる(本場の米国ではそれほどでもない)サード・ポイントなどは、例えばソニーに投資しているといっても実際はソニー株を保有する機関投資家から長期のコールオプションを買っているだけのことが多い。

 さてそんなヘッジファンドの本年6月末の運用残高総額(レバレッジをかける前)は3.2兆ドルで過去最高額を更新しているが、最近はその伸び率も鈍化してきている。

 というのもリーマンショック以降の2009年から2018年まで、すべてのヘッジファンドの総合利回りは10年連続でインデックスファンドに「負け続けている」からである。これは運用報酬控除後の比較であるが、「べらぼうに高い」運用報酬を取るヘッジファンドが、「タダみたいな」運用報酬のインデックスファンドに負け続けているからである。

 ちなみにインデックスファンドのビッグ3であるブラックロック、バンガード、ステートストリート(だけ)の運用総額は11兆ドルを超える。東証時価総額の2倍である。

 それでもヘッジファンドの世界にはカリスマ的な運用者(というよりファンドの主宰者)がいる。ここではそのなかから本誌の独断で「長期にわたって安定的に高利回りを出し続けている天才」を6人ご紹介したい。

 その報酬(ファンド全体ではなく個人の報酬)は時には数千億円にも達する。これはファンドのかなりの部分がすでに自分の所有となっているため、その運用益も加わるからである。またその各人の報酬ランキングも各種あるが、基本的には報酬は未公表であり推測であるため、ここではあまり引用しない。

 レイモンド・ダリオ(70歳)
  18兆円の運用資産を持つ「世界最大のヘッジファンド」であるブリッジ・ウォーター・アソシエイトの主宰者。投資スタイルは典型的なグローバル・マクロ型であり、パフォーマンスが非常に安定しているため、米国大手年金なども顧客となっている。

 ジェイムス・シモンズ(81歳)
  天才数学者でハーバード大学やMITで教鞭を取っていた。1982年に運用を始めたルネッサンス・テクノロジーは「世界最強のヘッジファンド」といわれる。投資スタイルはもちろんクォンツ型であるが、具体的には何でも投資対象であり、数年前には日本株市場でも暴れていた。シモンズ自身は10年以上も前に第一線を退き、自分の資金を運用しているだけであるが、いまだに高額所得ランキン上位の常連である。

 ケネス・グリフィン(50歳の「若手」)
 「シカゴの天才」といわれ、1990年に創業したシタデルの主宰者。ここ数年の合計では高額所得ランキングのトップであるが、同時に高額の離婚慰謝料でも有名となった。リーマンショック前までは日本にも事務所があり、本誌も取引していた。運用スタイルはグローバル・マクロ型とアービトラージ型の中間である。

 ポール・シンガー(75歳)
 「世界最凶のヘッジファンド」であるエリオット・マネジメントの主宰者。10年ほど前に、破綻したアルゼンチン国債を「捨て値」で買い集め、債務再編の呼びかけに頑として応じず、法廷闘争で「再編に応じた債権者への支払いを差し止めてまで」全額を額面で回収してしまった。そういう意味ではイベントドリブン型であるが、同時に「物言う株主」としても有名で、最近はサムソン電子やAT&Tや日本でもユニゾTOBに口を挟んでいる。

 デビット・テッパー(62歳)
  ゴールドマン・サックス出身で「ディストレス(破綻債券)の雄」であるアパルーサ・マネジメントの主宰者。2009年の40億ドルをはじめ確か年間の高額所得ランキングで4度トップになっているが、つつましい生活ぶりで知られている。

 ジョン・オーバーテック(49歳とまだ業界では「小僧」)
  16歳で国際数学オリンピック銀メダル、スタンフォード大学からアマゾンに入社、2001年に同年代のデビッド・シーゲルと共同でツゥーシグマ・インベストメントを創業。特にここ数年は目覚ましいパフォーマンスを上げており「クォンツ型の新星」である。

2019年9月24日