2021/10/24(日)

16時25分14秒

The ST

世界の出来事を独自の見解で読み解く 刺激的金融ブログ

検索

ドル/円

世界の株式市場に「波乱」の兆し

| 株式編 | 米国 | 2021年8月06日 |

世界の株式市場に「波乱」の兆し

 世界の株式市場は米国の株式市場に大きく影響されるため、これからも米国株式市場の動向に注意を払わなければならない。そして「ずっと」目の前の懸念材料に全く気にせず上昇を続けていた米国株式市場も、さすがにここにきて「波乱」の兆しが見えてきていると強く感じる。

 つまり米国の株式市場(つまり世界の株式市場)は、ここから徐々に(急激にではないが)警戒が必要となるはずである。

 NYダウは、コロナウイルス直前の高値である2020年2月12日の29551ドルから3月23日には19591ドルまで急落した。しかしそこからFRBの無制限量的緩和と米国政府の巨額財政支援で急反発し、とくにワクチン開発に目途がついた2020年11月から上昇が加速したままで、2021年7月26日には35144ドルの過去最高値を更新している。

 昨日(8月5日)も35064ドルと過去最高値圏である。現時点における米国株の(今までほとんど気にされていなかった)懸念材料はいくつもあるが、順番に見ていく。どれも急になって出てきたものではない。

1,ワクチン接種が進みコロナウイルス鎮静化による経済活動再開と企業業績拡大が株高上昇の大前提となっているが、ここにきて感染再拡大の兆しが出てその大前提が崩れる恐れがある。2021年4~6月期実質GDPは前期比年率6.5%と高成長ではあるものの、直前予想の8.4%は大きく下回った。足元の実質GDP実額は19.2兆ドルとコロナ前のピークである2019年10~12月期の19.1兆ドルを「やっと」上回ったが、全米雇用者数はまだコロナ前のピークから680万人も少ない。

米国GDPはコロナ禍の2021年前半に約2兆ドル落ち込んだが、6兆円のコロナ対策財政資金でその2兆ドルを回復させたことになる。しかしその間の米国株式時価総額はボトムの30兆ドルから50兆ドルまで20兆ドルも増えている。財政支出が経済活動より株式市場に回り、ますます貧富の差が拡大したことになる。それでもまだバイデンはインフラ投資など財政支出を繰りだし、一方で法人や富裕層の増税を含む財源確保には後ろ向きである。つまり経済活動と株式市場の「温度差」が限界に達しているはずである。

2,米国の消費者物価指数は、前年同月比でコロナ禍の2020年4月が0.3%増まで落ち込み、徐々に回復したものの2021年2月でも1.7%増とFRBの中期目標である2.0%を下回っていた。ところが同年3月が2.6%、4月が4.2%、5月が5.0%、6月が5.4%と上昇が急激に加速中である。6月のコア指数(食料品とエネルギーを除く)は4.5%と30年ぶりの上昇幅となった。しかしFRBは物価上昇が一時的であるとしてゼロ金利解除を2024年から2023年に前倒ししただけである。

FRBが雇用情勢や個人消費など経済活動の回復が十分でないため、物価上昇は一時的と考えているようである。しかし現在の金融政策・財政政策は経済活動に回らず株式市場や物価上昇を加速させるだけで、総合的には経済活動が低迷したまま物価上昇が進むことになる、つまりそうでなくても十分ではない米国の経済活動は、ここから物価上昇によってさらに「目減り」することになり、株式市場との「温度差」がさらに限界に達することになる。

3,バイデンの財政バラマキ、株価上昇、物価上昇は長期金利を上昇させる。2020年初めに1.9%だった10年国債利回りは、コロナ禍の2020年3月に0.5%まで急低下し、同年末でも0.9%しかなかった。バイデン政権誕生によるバラマキ政策や物価上昇で2020年3月末には一時1.79%まで上昇した。ところがそこから再び低下し、8月5日には1.22%となっている。足元の株高や物価上昇や米国経済の回復期待の中では「説明しにくい」金利低下である。

これは株高あるいは物価上昇あるいは米国経済の回復期待の「どれか」あるいは「すべて」が反転する可能性を示唆していると考えるべきである。

4、目先の金融政策では、ゼロ金利解除の前に量的緩和を終了させる必要がある。現在のFRBは毎月、国債を800億ドル、MBSを400億ドル買い入れているが、この新たな買い入れをゼロにする。ただFRBの総資産(市場への資金供給残高)はコロナ直前の4.2兆ドルから直近の8.2兆ドルまで4兆ドルも増大している。さらにFRBの保有債券が償還になるとそれだけ新規に買い入れるため、FRBの総資産が減ることはない。コロナ以降の米国政府による財政支援は先述のように6兆ドルであるが、そのうち4兆ドルはFRBが国債などを購入してファイナンス(賄った)したことになる。

 つまりFRBが量的緩和を終了させれば(国債など債券の新たな買い入れを止めてしまうと)、米国政府の財政支出が制限される。それに加えて8月から米国の連邦債務残高上限が復活している。これは1、で見たように、米国の経済活動より株式市場へのマイナス効果が大きくなる。量的緩和の終了は開始時期が未定であるが、2023年中には終了しているはずで、また金融・財政政策の健全性のためにも「近いうちに」終了させなければならない。それは株式市場にストレートのマイナス効果となる。

 今回は米国の国内要因だけを挙げたが、もちろん対立を強める中国リスクや、成長が鈍化する低開発国リスクなども考慮しなければならない。ここからの世界の株式市場は「要注意」と考えておくべきである。また従来なら世界の株式市場が全く気にしていなかった懸念材料が、今度こそ株式市場にダメージを与えることも考えておかなければならない。

2021年8月6日

The Stray Times(有料版)の予告  120回目

| 有料版記事予告 | 2021年8月01日 |

The Stray Times(有料版)の予告  120回目

 8月2日(月曜日)の夕方に予定通り更新します。以下、予定内容です。

1,特別特集   世界の株式市場の見通しを変更!  番外編(最終回)

 2週間前に、昨年11月以来、約9か月ぶりに米国を始め世界の株式市場の中期見通しを「やや弱気方向」に修正した。その理由は、既に「山ほど」現れている悪材用・懸念材料に対し、市場参加者の心理状態が「やっと」微妙に変化し始めたと感じたからである。

 その辺をあらゆる角度から検証するシリーズの3回目(最終回)である。今週は、米国についてはFOMCを中心に簡単に済ませ、中国、欧州、日本について検証する。もちろん米国株式の中期見通しを「やや弱気方向」に修正しているため、その他の株式市場も「やはり弱気方向」に修正となる。

2,今週の「一言加えたい」銘柄    アマゾンなど米国巨大IT企業編

 特別特集で世界の株式市場全体の見通しを修正しているので、このコーナーでは世界の株式市場の上昇をリードしていた米国巨大IT企業とくにベゾスが引退したアマゾンの「変調」についてである。

 総じて発表された2021年4~6月期の決算は相変わらず好調であったが、直後に株価が揃って反落してる。今まだあまり見られなかった動きであるが、さて何が変わったのか?を考える。
 
 
3,お勧めコーナー

 久々に「映画」です。

2021年8月1日

最新有料記事サンプル


2021年10月18日配信分
特別特集   円安を止めるべし!

特別特集   円安を止めるべし!

 円安が進んでいるが、このタイミングでの円安進行は日本をますます貧しくするだけの「非常に悪い円安」で、早急に止める必要がある。これまでも何度か書いてきたが、今週はこのポイントに絞って、過去の検証も加えて詳しく書きたい。

 その前に、先週(10月11~15日…


2021年10月18日配信分
お勧め「書籍」コーナー

お勧め「書籍」コーナー

 今週も、中国に関連する「書籍」である。地政学的に中国の脅威に最も晒されている国が日本であるため、中国の知識はいくらでも吸収しておかなければならない。

「米中対立」  佐橋亮・著  中公新書   1034円

 「アメリカの戦略転換と分断される世界」との副題が…


2021年10月18日配信分
今週の「一言加えたい」銘柄     「日本国」編

今週の「一言加えたい」銘柄     「日本国」編

 今週は、言い間違いでも考え違いでもなく「日本国」である。もちろん「日本国」は銘柄ではなく、企業組織でもなく、もちろん株式市場に上場しているわけでもない。

 しかし日本の財政を所管する財務省、主要マスコミ、それにカイル・バス(注)のよ…