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ベイルート大爆発の複雑な背景

| テロ・陰謀・超現象編 | 政治・政策提言 | その他 | 事件 | 中東 | 2020年8月08日 |

 現地時間8月4日、中東レバノンの首都ベイルートで大爆発が起こった。6日時点で死者が135名、負傷者が5000名以上とされるが、まだ100名以上が行方不明である。

 爆発はベイルート港に保管されていた2750トンもの硝酸アンモニウムが爆発したもので、この硝酸アンモニウムは2013年にロシア船がモザンビークに運んでいたものである。それが何故かベイルート港に安全処置が全く施されないまま6年以上も放置されていた。

 硝酸アンモニウムは肥料の原料であるが、きわめて安価な爆薬原料でもあり、水をかけただけでも爆発する。今回も最初は硝酸アンモニウムの保管場所近くで溶接などの火花が引火・爆発し、駆けつけた消防隊が放水したため2度目の大爆発が起こったはずである。爆心地には巨大なクレーターができ、キノコ雲が発生し、アンモニアなど有毒ガスが流れ出し、港に近いベイルート中心街や高級住宅街に大きな被害が出た。

 状況は2015年に中国・天津で起こった大爆発と同じである。この天津の大爆発は最後まで中国当局がその原因や被害状況を公表しなかったが、同じように安全処置が施されていなかった硝酸アンモニウムが爆発したものと考えられる。巨大なクレーターができ爆発が2度起こったなど類似点も多い。その天津で爆発した硝酸アンモニウムは500トンだったとされる。つまりその5倍以上の硝酸アンモニウムがベイルートで爆発したわけである。

 さてレバノンは昨年末にあのゴーン被告が「身の安全を求めて」逃亡した国である。しかし実態はゴーンの期待とは程遠く、レバノンは原油など資源が産出されず財政が破綻しており、キリスト教(マロン派)やイスラム教(シーア派)など多数の宗教が混在する政治的にも不安定な国である。

 また失業率は50%とも言われ治安も悪い。本年5月には12億ドルの外貨建て国債の利払いができずデフォルトしている。レバノンの人口は700万人であるが(ベイルートは200万人)、そこへシリアから200万人もの難民が流入している。レバノン国籍を持つゴーンも、勝手に逃げ込んだもののレバノン経済の実態には知らん顔で夫婦とも贅沢三昧であるため、大変に評判が悪い。またベイルート高級住宅街でゴーンが占有している日産自動車所有の邸宅も大破した。

 ところでレバノンで最も有名な日本人は、1972年のイスラエル・テルアビブ空港乱射事件の岡本公三である。イスラエルで13年服役した後、捕虜交換でレバノンに渡り異例の政治亡命が認められた。レバノンでは「敵国イスラエルを攻撃した英雄」である。このレバノンにおける岡本公三の待遇は、レバノンとイスラエル・米国の関係をよく表している。

 この大爆発をより複雑にしているのがヒズボラの存在である。ヒズボラはイスラム教シーア派の過激派組織であるが、同時に政党でもありレバノン連立政権のリーダー的存在でもある。

 つまりレバノンはヒズボラの存在が大きく、ヒズボラはイランから多額の資金援助、武器援助を受けている。つまりヒズボラは(ある意味レバノンは)イランの「革命の前衛」としてイスラエルさらに米国との対立を深めていることになる。

 そして大爆発を起こしたベイルート港の利権は「すべて」このヒズボラが押さえている。ということはレバノン政府は今回の大爆発でヒズボラの責任を問えない(問わない)。爆破自体は事故かもしれないが、2750トンもの硝酸アンモニウムを安全処置なしで放置していた責任は確かにある。

 しかし過激派組織でもあるヒズボラが、2750トンもの硝酸アンモニウムをただ「漫然」と放置していたとも思えない。硝酸アンモニウムは「きわめて安価な爆薬原料」である。今回の爆発との関係は不明であるが、ヒズボラはイスラエルや英国やドイツなどで大量の硝酸アンモニウムを隠しているとの噂がある。保管場所を狙ってミサイルを撃ち込めば、小型原爆くらいの被害が出る。

 とくに本年4月、ドイツはヒズボラの政治部門も軍事部門も併せてテロ組織指定しており、ドイツ国内で関係者を拘束し資金を凍結している。(ヒズボラの後ろ盾である)イランは「ドイツはイスラエルとアメリカの圧力に屈した。相当の代償を支払うことになる」と警告している。

 そう考えると今回のベイルート大爆発は、結果的にヒズボラのテロを未然に防いだのか、それとも加速させたのか? 答えは間もなく出そうである。

2020年8月8日

The Stray Times(有料版)の予告 第68回目

| 有料版記事予告 | 2020年8月02日 |

8月3日(月曜日)の夕方に予定通り更新します。以下、予定内容です。

 
1 特別特集  日米欧それぞれの今後の経済対策と株式など金融市場の行方

 7月30日に発表された米国の2020年4~6月期GDP速報値は前期比年率換算で32.9%、翌31日に発表されたユーロ圏でも年率換算40.3%のそれぞれ減少となった。日本は8月17日に速報値が発表されるが年率換算26%程度の減少と予想される。

 これらの数字自体は以前から予想されており改めて驚くべきものではないが、それぞれ4~6月期に経済はボトムをつけ7~9月期から急反発すると期待されていた。ところがコロナウイルスの再拡大でシナリオが大きく変わってしまっている。

 しかし世界の株式市場など金融市場や一部の商品市場は「そのへんの事情」を十分に織り込んでいるとは思えない。その歪(ひずみ)と今後の見通しを考える。

 
2 株式市場における今後の「勝ち組」「負け組」  北京字節跳動科技(バイトダンス)

 バイトダンスは未上場企業であるが、時価総額が1000~1500億ドルとも予想される世界最大の「メガユニコーン」である。ところが最近の米中間緊張激化により、米国でのサービス停止や米国事業の売却命令などが浮上している。

 そこでそもそもバイトダンスとはどんな会社なのか? 米国が懸念する情報漏洩とは? などを考えてみたい。ソフトバンク傘下のビジョンファンドも30億ドル出資しているはずである。

 
3 お勧め「書籍」「映画」コーナー

 また終戦記念日が近づいているため、関連する書籍をご紹介したい。

 
2020年8月2日

最新有料記事サンプル


2020年10月19日配信分
特別特集  米大統領選を奥深く理解するために  前半

 予告から表題も内容も変更した。その理由には民主党の大統領候補であるバイデンの不正の物証が次々と出てきたこともある。

 ここで息子ハンターを前面に出したバイデンの「ウクライナや中国から副大統領の職権を利用した不正な資金受領(つまり賄賂)」の証拠となるメールが出てきたとか、米国主流メディアが…


2020年10月19日配信分
株式市場における今後の「勝ち組」「負け組」   セブン・イレブン編

 上場している親会社はセブン&アイ・ホールディングスであるが、今週はその主要部門であるコンビニのセブン・イレブン編である。

 コロナウイルスの影響でここ1年(2019年7月~2020年6月)の日本のGDPはちょうど10%減少し、2020年通年の予想は5.3%の減少となっている。ということは2020年後半にかなりの…


2020年10月19日配信分
お勧め「映画」コーナー

 今週は久々に「映画」で、上映直前のこの作品を先行してご紹介するつもりだったが、肝心の日本での上映開始が10月23日から12月18日に変更されてしまった。

 当初から「見る前にご紹介しておきたい作品」であり、それは上映延期になっても変わらないため、そのまま掲載することにした。

「ナイル殺人事…