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5月FOMCは0.5%利上げと6月からの総資産縮小を決定

| 中央銀行・金融情勢・提言編 | 為替編 | 米国 | ドル(円) | 2022年5月05日 |

5月FOMCは0.5%利上げと6月からの総資産縮小を決定

 FRBは5月4日まで開催されていたFOMCの結果を午後2時(日本時間5日午前3時)に発表した。内容はほぼ事前予想通りで、政策金利(FF翌日物誘導金利)を0.5%引き上げて0.75~1.0%とし、パウエル議長は「必要とあれば中立水準(後述)以上に引き上げることも躊躇しない」とさらなる早急な利上げを示唆した。

 同時に6月1日からFRB総資産を月間475億ドル減らすことが決定された。また総資産縮小は開始3か月後に最大950億ドルまで拡大するとも付け加えているが、これは開始1か月後としていた事前予想から「後退」している。

 発表を受けて金融市場では過度の金利上昇懸念が後退し、10年国債利回りが発表直前の2.99%から2.93%へ、2年国債利回りが同じく2.81%から2.64%へ低下している。ドルも下落し、対円で1ドル=130円前後から129円近くまで、対ユーロで1ユーロ=1.050ドル前後から1.062ドルへ、それぞれ下落し、また発表前には辛うじてプラス圏だったNYダウも932ドル高となった。

 米国の消費者物価は2021年3月から目標である2%を上回り加速していたが、FRBは頑なに物価上昇は一時的と超緩和金融政策を放置していた。2022年2月24日にロシアがウクライナに侵攻してエネルギー価格や穀物価格をはじめ物価上昇がさらに加速する中で、2022年3月(先月である!)のFOMCで「ようやく」0.25%利上げしてゼロ金利を解消し、FRBの新規資産買入れをゼロにしただけだった。

 3月のCPIが40年ぶりの前年同月比8.5%上昇、PPIが過去最大の同11.2%上昇となる中で(4月分は5月11~12日に発表)、超金融政策の正常化を優先せざるをえない状況である。しかしここにきて米国だけでなく世界経済が「はっきりと」息切れしている。

 2022年1~3月の米国GDPは前期比年率換算1.4%のマイナス成長で、2021年10~12月期の6.9%成長、2021年通年の5.7%成長から大きく落ち込んでいた。また最近発表される景況感指数は軒並み低下している。

 FRBはこの状態で、利上げを急ぎ、ほとんど同時に総資産縮小に取り掛かる。

 今回の利上げ幅の0.5%は2000年5月以来20年ぶりである。先ほど出てきたパウエル議長の言う「中立水準」とは、経済活動を加熱も減速もさせない政策金利のことでFRBは3月のFOMCで2.4%(2.25~2.5%)としている。次回修正されるとすれば6月のFOMCである(年4回、ドットチャートなどと共に公表される)。

 つまりFRBは、「中立水準」まで利上げしても米国経済は加熱も減速もしないなら、できるだけ早急に「中立水準」まで利上げして物価上上昇を沈静化させようと考えていたが、今回のパウエル議長はさらに踏み切んで「中立水準」を上回る水準まで早急に利上げする可能性にまで言及した。

 ところが米国経済も世界経済も減速しているため、3月時点で設定した「中立水準」も大きく低下しているはずであるが、そこが考慮されていない。それに利上げだけで現在の物価上昇を沈静化させるなら、政策金利をボルカー議長時代の10%超にしなければならない。

 しかし今回の利上げで政策金利が0.75~1.0%となったため、すでに「現時点の中立水準」に近づいているはずである。もし6月と7月のFOMCでも0.5%ずつ利上げするなら、物価上昇が沈静化する前に、米国経済に急ブレーキが掛かってしまう。

 また今回のFOMCで6月1日からFRB総資産を毎月475億ドルずつ減らし、3か月後には毎月950億ドルずつ減らすと発表した。現在9兆ドルのFRB総資産を2023年の年末までに1.6兆ドルほど減らすペースである。

 FRBの総資産を減らせても物価上昇にはほとんど影響がない。ただFRB総資産が拡大すれば「レバレッジをかけて」株式市場に資金が流入したため、逆にFRB総資産が縮小すれば「レバレッジをかけて」株式市場から資金を引き揚げられるはずである。

 前回の金融政策正常化は、2015年12月から2019年1月までかけて政策金利をゼロ金利から合計2%引き上げ、FRBの総資産縮小は利上げ開始から22か月後の2017年10月から取り掛かった。それでも2019年に入ると米国経済が減速気味となり、2019年7月には利下げを開始し総資産縮小も打ち切っている。

 それに比べて現時点では、すでに米国経済が減速している中で「はるかに」早急な金融政策正常化に踏み切ることになる。価上昇が沈静化する前に。米国経済が失速する恐れが高まっていると強く感じる。

2022年5月5日