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間違いなく2022年の「爆心地」となるカザフスタン

| 政治・政策提言 | その他 | 2022年1月11日 |

間違いなく2022年の「爆心地」となるカザフスタン

 新春早々の1月5日(正確には4日深夜)、中央アジアのカザフスタンで燃料価格の大幅引き上げをきっかけに大規模な抗議デモが発生した。トカエフ大統領は即座にロシアが主導する旧ロシア連邦6か国から成る集団安全保障条約機構(CSTO)に部隊派遣を要請するとともに、自国の治安当局に「無許可の発砲」を認めるなど強硬な手段で抑え込み、10日には「法と秩序は完全に回復された」と宣言した。

 これまでに164名が死亡し、8000人が拘束されたようであるが、取り敢えず騒ぎはいったん収まった。

 カザフスタンは昨年末まで自動車燃料にも使われる液化天然ガス(LPG)価格に上限を設けていたが、新年になってこれを撤廃したためLPG価格が一気に2倍以上になり、これに不満を持った住民が抗議デモを起こしたとされる。しかし公開された数少ない映像で見る限り抗議デモや政府施設への攻撃は「統制」が取れており、単なる市民デモだったとも思えない。

 またCSTOを主導するプーチン大統領も10日には「破壊的な内外の勢力が状況を利用した」と暗に外国勢力の仕業と強調し、「(親ロシア)政権を揺るがす試みは許さない」と強く批判した。CSTOは2000人の治安部隊をカザフスタンに派遣しているが、この派遣は抗議デモ発生当日の5日に開始されている。

現在のCSTOはロシア、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタンの6か国で構成されるが、すべて現在も強固な親ロシア諸国であるだけでなく、NATOや中国などを意識した「要地」にある国ばかりである。同じく「要地」にあるアゼルバイジャン、グルジア、ウズベキスタンはすでに脱退している。

 カザフスタンは1991年12月の独立以来、ナザルバエフ前大統領の独裁政権が続いていた。2019年3月に現職のトカエフ(前職は上院議長でナザルバエフの腹心だった)に大統領職は譲ったものの、引き続き安全保障会議議長として「院政」を敷いていた。ナザルバエフはベラルーシのルカシェンコ大統領と並び「旧ソ連時代の共産党幹部から現在もロシア連邦の影響下で独裁政権を維持する」生き残りである。

 ところがトカエフ大統領は5日には早くもナザルバエフに代って自身が安全保障会議議長を兼務すると発表した。この時点でプーチンが主導するCSTOがカザフスタン政府(というよりトカエフ)を支持して治安部隊を派遣しているため、自動的にナザルバエフは失脚したことになる。ナザルバエフの安否と居場所はいまだに確認できない。ちなみにカザフスタンの首都であるヌルスルタンはナザルバエフの名前から取っており、その未来的な市街地は黒川紀章氏の設計である。

 またトカエフ大統領は翌6日にはカザフスタンの治安機関である国家安全保障員会議長のマシモフを解任し、8日には国家反逆の容疑で拘束している。国家安全保障員会の前身はKGBで、マシモフもナザルバエフ前大統領の下で首相を務めた重鎮である。またトカエフは翌9日には、同委員会の副議長2名も解任している。

 ここまでの動きを見る限り、これは市民デモを利用した(自ら煽った可能性も強い)トカエフによるナザルバエフ追放のクーデターであるが、プーチンも即座にカザフスタン政情が動揺して反ロシア勢力や海外勢力が入り込まないうちに「素早く行動した」ことになる。ウクライナのように親ロシア政権が反ロシア政権にとって代わられる可能性を素早く排除したわけである。

 ここで「成り上がった」トカエフにカザフスタンを治める能力と人望があるかがポイントとなる。これも数少ない国民への演説映像を見る限り、それほどの実力者とは思えない。本当に実力者ならナザルバエフが大統領職を譲らなかったはずである。

 というのはカザフスタンとは地政学的にも国際政治的にも、また資源大国としても非常に重要な国であり、ロシアはもちろん中国や中東(特にトルコ、イラン、アフガニスタン=カザフスタンはイスラム教の国)とも関係が深いからである。日本との関係も悪くない。米国はブリンケン国務長官が9日になってカザフスタンがロシア主導の治安部隊を受け入れた経緯の説明を求めただけである。しかしこのカザフスタンで政変が起こると、その国際政治に与える影響は「破壊的」となる。

 地政学的にみるとカザフスタンはユーラシア大陸の「真ん中」に位置する面積272万平方キロ(世界9位、日本の7.3倍)もある世界最大の内陸国で、カザフ人(モンゴロイド系)が中心の人口は2020年でも1875万人と少ない。
 
 カザフスタンは日量160万バレルの原油をはじめ、「ほとんどありとあらゆる天然資源」に恵まれているが、とくにウランは埋蔵量も生産量も世界最大である。従って旧ソ連時代は核開発施設があり核実験も行われ国土が放射能で汚染された歴史もある。また領内にあるロシア唯一のバイコヌール宇宙基地はロシアがコントロールしており、先日の前澤氏もここから飛び立っている。

 またカザフスタンは米国に次ぐ世界第2位のビットコイン採掘国で、5日以降インターネットが遮断されているためビットコイン価格も暴落している。

 カザフスタンは前述のCSTOだけでなく上海協力機構(CSO)のメンバーでもあり中国の一帯一路にも積極的に協力している。またイスラム教の国としてイスラム協力機構(OCI)やトルコが主導するチュルク評議会のメンバーでもある。

 繰り返しであるが、このカザフスタンで政変が起これば「ほぼ」世界中で大きな混乱が起こる。「成り上がり」のトカエフでは、安定政権を維持できないと危惧する。

2022年1月11日