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2022年を予想するにあたり「大局的に」理解しておくべきこと

| 中央銀行・金融情勢・提言編 | 日本 | 欧州 | 米国 | 中国 | 2022年1月04日 |

2022年を予想するにあたり「大局的に」理解しておくべきこと

 あけましておめでとうございます。

 2022年の政治・経済・金融市場の予想は、波乱要因が多すぎることは言うまでもないが、「大局的に」理解しておくべきことはある。

 確報値が出ている最新の全世界の名目GDP総額は2019年の87.7兆ドルである。この時点でも実質GDPとの差があったはずであるが無視できるとして(当時の世界のインフレは沈静化していたため)、2020年はコロナウイルスによる急激な経済活動の落ち込みと世界的な超金融緩和と大胆な財政支援による回復(正確には延命措置)があったが、IMFによる2020年の全世界の実質GDP総額は2020年比3.1%のマイナス、つまり85.0兆ドルだったことになる。

 2021年は10月時点のIMF予想では全世界で5.9%プラスであるが、世界の経済活動は夏以降かなり落ち込んでいたところに年末にかけてオミクロン急拡大と中国経済の混乱が重なり、また加速するインフレは実質GDPを押し下げるため、最終的に「せいぜい」4%程度プラスの88兆ドル強となるはずである。つまり全世界の実質GDPはコロナウイルス以前からほとんど成長していないことになる。日本のGDPはまだ減ったままである。

 それでは全世界の株式時価総額はどうか?発行済み株数ベースで見ると2019年末は88兆ドルでGDP総額と変わらなかった。それが最初のコロナショックに見舞われた2020年3月に68兆ドルまで急落したものの(世界の株式時価総額がコロナで急落した時期はこの1回だけである)、同年末に101兆ドル、2021年末に119兆ドルまで増加している。

 2021年は年間で全世界の株式時価総額が18兆ドル(2000兆円)も増加したことになる。2019年末からの2年間なら31兆ドル(3400兆円)となるが、どちらにも新規上場株が含まれるためすべてが値上がり益というわけではない。よく言われるバフェット指数は2007年と2018年に次いで歴史上3回目の100超えとなるが、直近は過去2回を大幅に上回る135にもなる。

 その最大かつ唯一の理由は、中央銀行が資金を「バラまき過ぎている」からである。日米欧の中央銀行の総資産合計は(もちろん資金をバラまき過ぎている中央銀行はこの3つだけではなく、それぞれ市場に出て行かず中央銀行に滞留している資金もかなりあるが、とりあえず趨勢は分かる)、リーマンショック直後の2008年に3兆ドル弱から5兆ドルに「急増」してからも増加を続け、2016~2019年は15兆ドルで止まったものの(この間にFRBは総資産縮小に取り掛かっていた)、コロナにより2020年から再度急増して2021年末は25兆ドルとなっている。つまり「恐ろしいスピードで」加速中である。

 世界の中央銀行による資金の「バラまき過ぎ」はコロナで始まったわけではなく、リーマンショック直後から13年間も(2016~2019年は止まっていたものの)増加していることになる。2020年11月からようやくFRBがテーパリングを開始し、ECBも2021年3月から開始するはずであるが、それでも新規の買い入れが無くなる(減る)だけで総資産合計は暫く増加し、当面は減ることはない。償還分が再投資されるからである。

 そもそも世界経済の潜在成長率はコロナ以前から減速しており、2015~2019年の実質GDPの年平均成長率は先進国で2.1%、内訳は米国が2.4%、ユーロ圏が1.9%、日本が1.0%でしかない。先進国経済が減速すると中国を含む新興国・発展途上国経済も減速するため、リーマンショックがあっても、コロナが拡大しても、脱炭素でEVブームとなっても、世界の中央銀行が資金を13年間も「バラまき過ぎていた」ことになる。

 2021年のGDP総額はコロナ以前の2019年からほとんど増えておらず(経済が新たな資金を必要としておらず)、株価とくに新興銘柄や仮想通貨などが期待感だけで上昇し、エネルギーを含む資源価格、食品価格、人件費まで上昇するインフレ加速となる。コロナで供給体制が追いつかないことや、中東やロシアがエネルギー価格決定力を取り戻している影響ももちろんあるが、根本は中央銀行による資金の「バラまき過ぎ」である。

 2022年を「大局的に」見回して、世界がこの中央銀行による資金の「バラまき過ぎ」の弊害を認識できるかどうかが最重要と考える。それも新たなバラマキだけではなく膨れ上がった中央銀行の総資産縮小に取り掛からなければならない。そうしなければ際限のない財政支出にもバブル拡大にも歯止めがかからない。財務省の矢野発言や日銀の黒田発言は因果関係が逆であると感じる。

 そこを無視したままだと「いずれ」人類史上最大級のバブル破裂と信用連鎖破壊が来る。震源地はゼロ成長の日本ではなく中国であることも間違いないが、距離的にも政治的にも「近い」日本も大きな巻き添えを食う。

2022年1月4日