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岸田新政権発足で見えてきたもの

| 政治・政策提言 | 日本 | 2021年10月01日 |

岸田新政権発足で見えてきたもの

 9月29日に投開票された自民党総裁選は、岸田氏を新総裁に選出した。終ってみれば安倍・麻生両氏の支持を得て「本命」だった岸田氏が、高市氏まで陣営に引き込んだ段階で勝利が確定的となった。ただ問題は、これらが岸田氏のリーダーシップの結果とは言えないところである。

 何故かマスコミの世論調査では圧倒的トップだった河野氏は、再生エネルギー利権に固執する小泉親子、もう行先のない石破氏、自らの利権しか興味のない二階氏、それに菅首相と陣営を組んだが、ファミリー企業である日本端子が中国から多大なメリットを得ており、看板の年金改革が実際は消費増税論でしかなかったことなどから急激に勢いを失った。ほとんど「自滅」だったと言える。

 岸田新総裁とは、安倍・菅両政権で維持していた官僚組織の人事権を抑えて支配する「強すぎる官邸」がいったん終了し、復活した自民党各派閥の力学と各官僚組織の省益が猛烈に反撃するタイミンクで選ばれた(タイミングだから選ばれた)総裁である。さらに派閥バランスだけでなく各省庁の思惑まで重視する「気配り」の政治家だからこそ、このタイミングで新総裁に選ばれたことにもなる。

 明らかになりつつある党役員人事でも、麻生氏の副総裁(財務相兼任は未定)、幹事長に麻生派幹部の甘利氏、女房役で自派から起用するものである官房長官まで細田派(実質安倍派)事務総長の松野・元文科相か同派の萩生田文科相、政調会長に総裁選(決選投票)で協力してくれた高市氏(防衛相に起用すべきと考えるが)、総務会長まで細田派若手の福田達夫氏(福田赳夫元首相の孫、福田康夫元首相の息子)と続き、選挙対策委員長にやっと自派(宏池会)の遠藤血利明・元五輪相が出てくる。さらに総裁選で戦った河野氏や野田氏まで処遇するつもりである。

 主要閣僚人事はこれからであるが、同じような「気配り(論攻賞)」のオンパレードのはずで、これで指導力が発揮できるのか(何よりも国民のために働いてくれるのか)が心配になる。主要閣僚ではとくに外務相、防衛相、総務は大物が必要であるが、開けてみなければわからない。

 そういえば早々と世耕参議院幹事長の留任が発表されている。世耕氏といえば二階氏の選挙区である衆議院・和歌山3区への鞍替えを狙っているため、早々と参議院幹事長に留任させて今度の衆議院選出馬を封じ込め、二階氏が(あるいは三男が)議席を守れるよう配慮している。総裁選で対立した二階氏に対してまで「気配り」を怠らないようである。

 さらに早速「降ってわいたような」金融商品の売却益や配当課税などに対する「金融取引関連税率の引き上げ」が飛び出している。財務省の反撃が始まっている。たまたまかもしれないが総裁選当日(29日)の日経平均が600円以上の急落となったため、日銀が4月以降3回目のETFを701億円買い入れている。急落していたとはいえTOPIXが2000ポイントを上回る水準で「史上初」の買入れである。つまり過去最高水準でETFを買い入れたことになる。これも「新総裁に恩を先に売っておいた」と考えられなくもない。

 さて総裁選の第一回投票では、トップが岸田氏で議員票が146票、党員票が110票の計256票、河野氏の議員票がわずか86票、党員票が169票の計255票、3位が高市氏で議員票が河野氏より多い114票、逆に党員票がわずか74票で計188票、最下位の野田氏でも議員票が34票、党員票が29票で計63票となっていた。

 この辺から党員・党友票が多い河野氏(石破氏も加えて)が、議員票で岸田氏と高市氏の連合軍に大差で負けたのは、総裁選は民意を反映していない結果であると一部マスコミが批判しているが、これは全く見当はずれの議論である。

 まず総裁選は自民党のトップを決めるもので、民意を反映することは技術的に難しい。民意は総選挙で反映するものである。だいたい党員・党友票といっても、本当に各自が党費を支払っているかとか(誰かがまとめて支払っているケースがほとんどらしい)、各党員が実在しているか、ダブっていないか、禁止されている外国人が混じっていないかなどが全くチェックされない。しかも党員票の大半が総裁選前半に投函されるため、総裁選終盤の動向がほとんど反映されていない。

 つまり昨年の米大統領選の郵便投票のようなもので、とても民意が反映されているとは言えない代物である、つまり河野氏や石破氏は、そんな党員票を多く集めるため、議員としての人気が(つまり日本をリードできる政治家であるかどうかが)過大評価されていることになる。

 つまり党員・党友票こそ、国民やマスコミをミスリードしていることになる。党員・党友票を今後も重視していくなら、もっと公正な投票方式に変える必要がある。次の総裁選まで常識的には3年もあるため、じっくり考えて変更すべきである。

 それにしても盤石とみられていた菅総裁がたった1年で倒れたため、もうチャンスがないと見られていた岸田総裁が誕生した。岸田氏は昨年も菅首相の対立候補で総裁選に出馬していたが、もうチャンスはなかったはずである。政治の世界ではチャンスは1度だけで、それを逃すと今回のようなアクシデントがない限りチャンスは巡ってこない。

 とういう意味では河野氏にはもうチャンスはなく(本意は不明であるが麻生氏の「待て」のアドバイスは正しかったことになる)、高市氏も次のアクシデントがない限り女性初の総裁は難しいと感じる。チャンスをつかむ能力だけは小池都知事の方がある(そうなれば「世も末」であるが)。

 ところでその岸田新総裁の経済政策、防衛政策、外交政策(とくに中国政策)などがまだ正確に伝わってこない。「気配り」だけで日本を引っ張れるほど現在の世界情勢は甘くない。ここからが岸田新総裁の「実力」が試される。

2021年10月1日