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本格調整入りしたのか? 世界の株式市場

| 中央銀行・金融情勢・提言編 | 日本 | 米国 | 2021年3月05日 |

本格調整入りしたのか? 世界の株式市場

 昨日(3月4日)の日経平均は628円安の28930円(終値、以下同じ)となり、本年高値(30年半ぶりの高値)となった2月16日の30467円から1537円(5.04%)の下落となる。

 同日のNYダウも345ドル安の30924ドルとなり、本年高値(史上最高値)となった2月24日の31961ドルから1037ドル(3.24%)の下落、成長企業の多いNASDAQ総合指数は219ポイント安の12464ポイントとなり、こちらは史上最高値となった2月12日の13807ポイントから1343ポイント(9.72%)もの下落となっている。

 米国株式の下落については長期金利の上昇に原因があるとの解説が多いが、昨日のパウエルFRB議長は長期金利上昇については一時的との見方を示し、金利上昇抑制について何の言及もなかったため10年国債利回りが1.55%まで上昇し、株式市場の足を引っ張った。10年国債利回りは昨年末の0.91%から、1月25日には1.61%まで上昇していた。

 米国長期金利についてはバイデン大統領が就任した本年1月20日頃までは「期待インフレ率の上昇」による金利上昇だった。これは米国の経済活動が活発化すると企業収益も物価も賃金も「健全に上昇」する「良い金利上昇」であり、歴史的にみても株価上昇要因となる。

 ところが本年2月以降は「実質金利」そのものが上昇している。これは米国における資金コスト(調達コスト)そのものが上昇して経済活動や企業収益にブレーキを掛ける典型的な「悪い金利上昇」となり、常識的には株価下落要因となる。

 この「良い金利上昇」から「悪い金利上昇」への変化は本年2月に急に始まったわけではなく、まだ市場で広く認識されているわけでもない。しかしバイデン政権発足による典型的なバラマキ型の経済政策が始まることによるインフレ懸念に加えて(すでに1.9兆ドルもの家計への資金支援を中心とした経済対策法案が下院を通過している)、想定される国債大量発行に対しFRBが昨年春頃とは違い大規模な資産買い入れに踏み切る気配がなく国債需給関係の悪化が懸念される。この2つの懸念から長期金利が上昇しているが、どちらも「悪い金利上昇」である。
 
 原油や銅などの資源価格はすでに昨年後半から上昇していたが、それも当初の経済活動の回復期待から、インフレ加速予想による投機的な資金流入による「悪い物価上昇」となりつつある。

 ここで昨日の発言からパウエルFRB議長は「長期金利上昇は一時的であり気にする必要はない=悪い金利上昇との認識はなく対策を講じる必要はない」と考えていることになる。

 コロナウイルス対策として昨年春から投入された財政資金は、昨年末の9000億ドルと今回の1.9兆ドル(上院で減額される可能性もあるが)まで加えると5.7兆ドル(2020年の米国名目GDP=20.8兆ドルの27.4%)にもなる。確かに昨年春の米国経済はGDPが瞬間的に2兆ドル吹っ飛び、失業者が2400万人を超えるパニック状態だったため、当時の合計2.9兆ドルの財政資金は絶対必要であった。

しかしそこから米国経済が回復するにつれ投入された財政資金が過剰になっていった。一度市場に供給された財政資金は消えないでどこかに滞留する。だから昨年後半から米国株ついで資源価格が急上昇したわけである。しかも直近の米国GDPはコロナウイルス前の97.5%まで回復しているため、本来なら追加の財政資金など不必要である。

繰り返しであるが、現在の米国長期金利上昇はこの過剰資金によるインフレ懸念と、国債増発による需給関係悪化(米国ファンダメンタルズ悪化)懸念の両方が原因である。そうなるとFRBは市場から過剰資金を吸収しつつ長期国債などを買い入れて長期金利の上昇を食い止める行動が必要となる。

具体的にはFRBが短期国債(あるいは短期金融資産)を市場に売却して長期国債を買い入れる「ツイストオペ」のような政策が必要となるが、肝心のパウエル議長の現状認識はそこから遠いことが昨日の発言からわかる。

 バイデンがバラマキ政策を緩めずFRBが無策のままなら、米国長期金利は上昇を続け(多分コロナウイルス前の1.9%あたりまで上昇する)、米国株式に対する市場心理も悪化を続けることになる。

 日経平均は依然として米国株式の動向に追随しており、本日(3月5日)朝方も500円近い下落となっている。日銀は3月18~19日に開催される政策決定会合に合わせて、これまでの金融政策の点検も行う。そこで何が飛び出すか恐る恐る待つことにする。

2021年3月5日