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オリンピックの裏側はカネばかり

| 未分類 | 2021年2月12日 |

オリンピックの裏側はカネばかり

 2月11日早朝(以下、すべて日本時間)、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会・森喜朗会長の辞任が伝えられ、昼過ぎは確定的となり、夕方には後任が川淵三郎氏に「決まった」と報道されている。わずか1日の動きである。

 その原因は2月3日の森喜朗会長の女性蔑視ともとれる発言で、そこを日本のマスコミが集中的に攻撃し、国会でも大騒ぎになり、IOCをはじめ世界に批判が広がったためとされるが、それはコトの表面しか見ていない。

 発言当初は森会長を擁護していたIOCは9日になって初めて「不適切な発言だった」と梯子を外し、11日早朝に独占放映権を持つNBCが辞任要求したため引導を渡された。この2つが「すべて」である。

 そもそもオリンピックとは欧州貴族が中心のIOCの巨大なライセンスビジネスである。オリンピックの名前を使って集められたスポンサー料や放映権料はすべてIOCの収入となり、開催地に半分が還元される。その金額はだいたい総額1.6兆円で、IOCと開催地(今回は東京オリンピック組織委員会=東京都ではない)が8000億円ずつ受け取る。

 しかし施設の建設や運営費はすべて開催地(ここは大半が東京都=組織委員会ではない)の負担となるため、だいたい巨額赤字となる。今回の開催地である東京都などが負担する費用は1年延期のコストも含めて3兆円になり、差し引き2兆円以上の持ち出しとなる。IOCもそのうち開催希望都市がなくなる事態をコロナウイルス以前から懸念しており、既に2024年開催をパリ、2028年開催をロサンゼルスに前倒し決定している。

 IOCとしてはオリンピックさえ開催されれば、大した負担もなく8000億円の「ほぼ」全
額が収入となるが、非営利の任意団体であるため税金は支払っていない。この8000億円の大半がどこに消えているかよくわかっていない。

 ところがオリンピックが無事に開催され、IOCが潤うためには放映権収入だけでなく全世界へのテレビ放映が不可欠である。そして東京オリンピックの独占放映権は米国のNBCが持つ。NBCは2014年から開催地も決まっていない2032年まで10大会の独占放映権を120億ドル(1.3兆円)で取得しているため、IOCは全くNBCに頭が上がらない。

 ところがNBCは東京オリンピックの開催に後ろ向きである。コロナウイルスの影響が残り開催が不透明だからである。NBCとすれば、これまで支払った費用を保険でカバーし、代替イベントの放映スポンサー募集に取り掛かるためにも、早く東京オリンピックを中止決定させたい。そこで開催の最終決定権を持つIOCに圧力をかけるが、IOCは開催さえできれば巨額収入が得られるため「おいそれ」と中止決定できない。

 そんなとき森発言が飛び出した。だからIOCは当初は開催に固執する森会長を擁護していたが、中止決定させたいNBCの意向を無視できなくなり梯子を外したことになる。この段階で東京オリンピック7月開催の可能性は「ほぼ」消滅している。

 東京オリンピック組織委員会にも、すでに巨額のオリンピック利権が発生している。このオリンピック利権は政治(清和会)、国(財務省)、電通の3者で「山分け」する構造である。財布を握る組織委員会事務局長は元財務事務次官の武藤敏郎氏である。

 今回はその清和会の森喜朗会長が辞任するため、その後任も清和会(細田派)からでなければならない。具体的には安倍晋三・元首相が有力とされていた。ところが2月11日には「あっさり」と川淵三郎氏が後任会長に確定的となった。

 菅内閣の勢いが急減速する中で、安倍晋三・元首相に再々登板の芽が出てきたこともあるが、その背景は東京オリンピック7月開催が絶望的になり、清和会としても組織委員会に固執する意味がなくなったからである。次期会長は(タイミングはともかく)開催中止を国民に伝えなければならず、貧乏くじでしかない。すでに十分「利権」を食い尽くした清和会(森会長)は、体よく逃げ出すことになる。

 ここで(オリンピック開催が日本国民の利益に繋がるかどうかの議論はさておき)東京オリンピック開催に拘るなら、①中止ではなく2022年まで延期、②2024年開催をパリから譲ってもらい、パリは2028年、ロサンジェルスは2032年へ順送りとする、③2032年に代替開催する3つの選択肢がある。もちろん日本の組織委員会にその決定権はないが、2021年をただの中止にせず3つの選択肢からどれかをIOCに呑ませなければならない。

 現実的には①は難しく③となるが、②も全く可能性がないわけではない。少なくとも東京オリンピック開催が消滅することにはならない。森会長は辞任前に最低これだけは押し込む必要があったが、たぶん何も出来ていない。結局のところ辞任後も森院政となる。

 いずれにしてもオリンピックの裏側は、かくもカネばかりである。この構造を理解しておかないと、いつまでたっても理想論だけとなる。

2021年2月12日