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NTTのドコモ完全子会社化の意味

| 個別企業編 | 日本 | 株式編 | 個別企業編-その他 | 2020年10月02日 |

 NTTは9月29日、NTTドコモをTOBにより完全子会社化すると発表した。NTTドコモは1992年にNTTの移動通信事業を分離・独立させたもので、1998年に東証一部に株式上場している。

 現在はNTTが66.21%を保有する筆頭株主であるが、残る全株を1株=3900円(発表前日の終値・2775円に40.5%のプレミアムを加えている)で取得し、完全子会社とするものである。NTTは9月30日に公開買付届出書を提出しており、同日から11月16日までが買い付け期間となる。

 TOBそのものの成立要件は0.45%の取得だけである。そうなるとNTTの持ち株比率が3分の2を超えるため、定款変更などを通じて全株取得が可能となる。いずれにしてもNTTドコモは上場廃止となる。また全株取得した場合のNTTの総取得金額は4.25兆円となり、日本の株式市場で過去最大のTOBとなる。

 ところでTOBは単純に買付者(NTT)が対象者(NTTドコモ)の株主から買い付けるだけなので、あまり第三者に支払う報酬は多くないと思われるが、とんでもない。あまり明らかにされることはないが、金額が大きいだけに「かなり高額の報酬」が関係者の間で「山分け」される。

その関係者とは主なものだけで、まずNTTのアドバイザーが三菱UFJモルガン・スタンレー証券、TOB価格が公開買付者(NTTのこと)の株主にとって財務的見地から公正である旨の意見書(フェアネス・オピニオン)を提出したデロイト・トーマツ・ファイナンシャルアドバイザリー合同会社、法務アドバイザーが森・濱田松本法律事務所と日比谷総合法律事務所である。

 一方で、NTTドコモのアドバイザーが野村證券、法務アドバイザーが中村・角田・松本法律事務所である。

 そしてこのTOBの公開買い付け代理人も三菱UFJモルガン・スタンレー証券であり、公開買付届出書に添付する総額4.3兆円の融資証明書は三菱UFJ銀行(1.5兆円)、三井住友銀行(1.2兆円)、みずほ銀行(7000億円)、農林中央銀行(4000億円)、三井住友信託銀行(3000億円)、日本政策投資銀行(2000億円)がそれぞれ提出している。こういう融資には金利以外に「かなり厚い」コミットメントフィーが支払われる。

 さてそれではNTTがここまで巨額費用をかけてNTTドコモを完全子会社化する理由は何か?

 それはNTTがNTTドコモへの支配力を強化し、もう一度NTTグループとしての存在感、政治力、技術開発力を発揮することに尽きる。NTTは2020年6月にドコモに副社長として送り込んだばかりの井伊副社長を12月1日付けで社長に昇格させ、直接統治に乗り出す。

 記者会見ではNTTドコモは営業利益では業界第3位(つまり最下位)という声が上がっていたが、それでもドコモは2020年3月期に5915億円(前年比10.9%減)の純利益を上げている。同期におけるNTT本体の純利益は8553億円(同0.1%増)であるが、その中にはドコモの持ち分利益(3915億円)と受取配当(1282億円、1株=60円)が含まれている。

 つまりドコモはこのままでもNTTの収益に「大いに」貢献していたのである。

 それではNTTがドコモに追加投資する4.25兆円は、ドコモを1株=3900円で計算するとPERが20.8倍、PBRが2.4倍にもなる。NTT自体の現在のPERは9.27倍、PBRが0.85倍であるため、明らかにNTTの株主価値が「薄まる」ことになる。

 ましてや菅政権は「携帯電話料金の一層の引き下げ」を要求しているため、ドコモの収益力がこれ以上伸びることはなく、またさらなる設備投資やコンテンツ投資も必要となる。

 また総務省としても天下り先が1社減ることになり、持ち株を夢のような高値で売却できるNTTドコモの株主以外に「儲かる」ところがないような気がする。こういうTOBに必ず出てくる「TOB価格を引き上げようとする」外国人株主の動きが出るとも思えない。

 この辺については、海外の通信会社のダイナミックな動きと対比させて、また「菅官邸」の関与も含めて、近々詳しく検証する。

2020年10月2日