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黒川検事長辞任後の検察庁は、官邸と対決するのか「新たな守護神」となるのか?

| テロ・陰謀・超現象編 | 政治・政策提言 | 日本 | 事件 | 2020年6月11日 |

 「官邸の守護神」といわれた黒川弘務・東京高検検事長(当時)は、「降って湧いたような賭け麻雀」騒動で5月21日に辞任、後任に林真琴・名古屋高検検事長が横滑りし、次期検事総長が決定的となった。

 それでは黒川氏が去った検察庁は、その本来の職務である「官邸だろうが国会議員だろうが悪事は悪事で摘発する」のか、また「黒川氏がいなくなっても官邸の守護神として何も変わらない」のかは、国民として大いに気になるところである。

 その答えは、国会が6月17日に閉幕した後に「ハッキリ」するはずである。

 河井克行・元法務大臣とその妻の案里・参議院議員の、選挙違反(贈賄)を巡る捜査が進んでいる。案里氏は2019年7月29日に投開票された参議院選挙で広島地方区から出馬し当選するが、この出馬・当選は最初から「不自然」だった。定員2名の参議院広島地方区は革新系無所属の森本真治氏と自民党の溝手顕正氏が議席を分け合っていたが、そこに2019年3月になって自民党本部が強引に案里氏を自民党候補として公認した。

 自民党で2議席独占を狙ったのかというと全く違う。明らかに同じ自民党で現職の溝手氏を「狙い落すため」であり、自民党からの支援資金も溝手氏の1500万円に対し、案里氏にはその10倍の1億5000万円が送られた。選挙区の状況や当落すれすれの候補者に対して支援金が増額されることはあるが、それでもせいぜい2倍くらいで、溝手氏に送られた1500万円あたりが平均値である。

 結果は当然のようにその溝手氏が落選して、潤沢な選挙資金が「使い放題」だった案里氏が当選する。やはり「選挙はカネ」なのである。

 ここでなぜ案里氏だけに破格の1億5000万円が送られたのか、そもそも本当に自民党が用意した参議院選挙の支援資金から支払われたのかなどの疑問が残るが、ここは後でまた出てくる。

 そして2019年10月末に週刊誌が、案里陣営は「うぐいす嬢」に法定の倍である日当3万円を支払っていたと報じ、夫の克行氏が就任したばかりの法相を11月1日に辞任する。後任は後にさんざん迷走する森まさこ氏となった。

 ところがそこから克行氏が案里氏の立候補が決まった2019年3月頃から県会議員や市会議員などに十万円単位の現金を渡して案里氏の票の取りまとめを依頼していた事実が次々と発覚し、2020年3月3日に案里氏の公設秘書ら3人が公職選挙法違反で広島地検に逮捕された。
 
 本来は国会議員がらみの捜査は東京地検など特捜部の管轄であるが、今回は最初から一貫して広島地検が捜査していた。それでは東京地検特捜部は何をしていたのか? 当時は「官邸の守護神」である黒川氏の定年延長・検事総長就任が既定事実とされていたため、東京地検特捜部も官邸に忖度して河井夫妻の捜査を避け、いつもの秘書の犯罪で終わらせるつもりだったのだろう。

 しかし広島地検は河井夫妻の贈賄額を2000万円まで積み上げ、常識的には6月17日の国会閉会後に逮捕できるレベルまで漕ぎつけている。

 ところがもっと重要な問題がある。その贈賄の原資となった1億5000万円の「出処」である。これは正式に自民党の参議院選挙対策費から出ているとは思えない。自民党内部からも不満が出て収拾がつかなくなるからである。これこそIR疑惑の「大本尊」だったと考えるが、これこそ東京地検特捜部が出動し自民党本部まで強制捜査する事案である。実際に黒川氏が辞任した直後に「そんな噂」が流れたが、1日で消えてしまった。

 そこで冒頭の、黒川氏が去った検察庁は「その本来の職務である官邸だろうが国会議員だろうが悪事は悪事で摘発する」のか、「黒川氏がいなくなっても官邸の守護神として何も変わらない」のかが、国会閉幕後の広島地検と東京地検特捜部の行動でわかる。

 まず広島地検は河井夫妻を逮捕しようとするはずであるが、そこで検察庁がブレーキをかけて在宅起訴で済ませるなら、黒川氏が去っても検察庁はすでに「官邸の守護神としてうまく機能している」ことになる。

 難しいのは東京地検特捜部の官邸への対策である。これは黒川氏に抑えてもらった安倍政権の悪事の中でも「飛び切りの大事件」であり、自民党幹部にまで逮捕者が出て安倍政権が吹っ飛ぶ話である。そこで稲田・現検事総長や林・次期検事総長が「そこまで切り込む覚悟があるなら」国民として大変に頼もしく思うが、今のところ1~2%の確率であろう。

 もしそういう事態になったとしても官邸・検察庁ともに助かる「妙案」がある。検察庁には偉大な先輩(馬場義続・元検事総長)がいて、ちゃんと「前例」を作ってくれている。

 あの森まさこ法務大臣が「コロナウイルス対策にまだまだ重要な時期であるから」とかなんとか言って歴史上2度目の指揮権を発動し、すべてに蓋をして同時に辞任する。もともと森法務大臣は「やめたい」といっているので、どうせなら歴史に名を残した方がよい。
 
 安倍首相は「森法務大臣がよくお考えになって決断されたので尊重したい」といつもの逃げを打ち、検事総長は「遺憾だ」の一言であろう。これで官邸の存続と検察庁のメンツが守られるわけである。

 現実はそれらにはるか及ばず、河井夫妻が在宅起訴で終わる可能性が最も高いと考える。官邸と検察庁の関係は黒川氏が去っても何も変わらないような気がする。

2020年6月11日