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検察庁法改正でマスコミが報道しない「真実」

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 官邸は1月31日に「官邸の守護神」と言われた黒川弘務・東京高検検事長(当時)の定年を閣議で半年延長し、強引に検事総長に就けようとした。そして「後付け」で検察庁法を国家公務員法と束ねて改正し、定年延長の法的根拠を整えようとしていた。しかし野党だけでなく肝心の検察OBやSNSからも反対の声が広がり、5月18日には本国会での成立を諦めざるを得なくなった。

 そうこうしているうちに肝心の黒川検事長が、緊急事態宣言下に賭け麻雀をしていたと週刊誌に報道され、そこから2日後の5月22日に辞任している。安倍内閣は「定年延長も黒川検事長の辞任も処分(懲戒ではない訓告)もすべて検察庁と検事総長が決めたもの」と責任逃れをしている。

 この辺が「だいたい平均的な」マスコミの報道である。ところが「じっくり」と考えると、違和感が出てくる。ここからはあくまでも本誌の推測である。

 まず、普通にしていれば約3か月後に検事総長の椅子が転がり込んでくる黒川氏が、そうでなくても安倍政権に近いとされる産経新聞の大竹直樹記者(ここはイニシャルにするつもりだったが、一部の記事に実名が出ているためそのまま書く)の自宅でわざわざ緊急事態宣言下に賭け麻雀なんかするだろうか? 

 出世と保身と自分の損得勘定(失礼!)しか考えない高級官僚としては「ありえない行動」である。

 ここは「麻雀などやっていなかった」と考えてみたらどうだろう? それなら「何のために」集まっていたのか? それは黒川氏が親しい記者を集めて「そのまま検事総長になった場合の自分の損得勘定を考えるための情報収集」だったと考える。記者宅に集まった理由は、単純に緊急事態宣言下で「謀議ができる場所」がなかったからであろう。

 黒川氏の立場からすると、そのまま検事総長になってもOBも含めて検察庁(あるいは法務省)全体を敵に回すことになる。そうすると検事総長引退後の「おいしい天下り先」が期待できなくなり、何よりも急激に弱体化している安倍政権と一蓮托生となり、あらゆる責任が降りかかってくる恐れがある。つまり黒川氏は必ずしも検事総長となることは得策ではないと考え始めていたとしてもおかしくはない。

 さらにこの麻雀は5月20日配信の「文春オンライン」で報道されたものであるが、検察庁法改正案の今国会での成立が断念された5月18日の直後である。つまりリークは検察庁法改正を阻止するためのものであり、週刊誌の発売直前に検察庁法改正の成立が断念されていたのは「たまたま」だったはずである。

 これこそ検察庁(あるいは法務省)が、二度と官邸主導の人事を許さないための実力行使だったと考える。官邸主導の人事を強行するからこんな(麻雀)問題が出てきたという警告である。だいたいリークした先が(もちろん検察庁は出元がわからないように巧妙にリークしたはずであるが)週刊文春だったというのも「世間に早く知らしめるため」である。

 同じように「#検察庁法改正に抗議します」のSNS拡散も、フォロワーの多い芸能人も参加させて「早く拡散するように」工夫している。もっと多数の芸能人に呼びかけていた形跡もある。

 これを見て黒川氏もさすがに検事総長はあきらめて、退職金や天下りに支障がない軽い処分(訓告)と引き換えに「やってもいない麻雀」で2日後に辞任したと考える。

 安倍政権が憲政史上最長の存続となった理由は、2014年5月に内閣官房内に内閣人事局を設置し、官僚の首脳人事をコントロールするようになったからである。そこに検察庁が「二度と官邸に人事をコントロールされないよう」実力行使したことになる。

 検察庁には前例がある。

 内閣(法務大臣)は一般捜査に関して検事総長のみを指揮できる「指揮権」があるが、これは1954年の造船疑獄以来、一度も発動されず封印されたままである。内閣が造船疑獄で佐藤栄作自由党(当時)幹事長の逮捕を止めたため、世間から猛烈な批判が出て当時の吉田茂内閣が倒れている。そしてこの「指揮権」は、佐藤栄作逮捕を止められた方の馬場義続・東京地検検事正(当時、後の検事総長)の自作自演だったと囁かれる。

 つまり馬場検事正は、自らの捜査を政治に止めさせて(もともと造船疑獄は無理筋で無罪になる可能性もあった)、猛烈な政治批判を起こして「二度と政治に捜査を止められない」よう指揮権を封印してしまったことになる。

 黒川氏の辞任直後の5月27日、広島地検は河井元法務大臣夫妻への捜査を強化している。今度はうぐいす嬢への報酬とか、県議会議員などに10万円程度の現金を渡したという「ケチくさい選挙違反」ではなく、自民党本部から出たとされる1億5000万円という「本丸」に切り込んでいる。

 こちらの方は自民党本部も含めて大問題になりそうである。検察庁の逆襲が始まったようである。

2020年5月30日