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フェイスブックの仮想通貨・リブラはなぜ世界の金融当局が警戒しているのか?

| 仮想通貨・投資信託・不動産など編 | 2019年7月04日 |

 フェイスブックが来年(2020年)前半をめどに仮想通貨・リブラをスタートさせるといわれており、世界の金融当局が警戒している。仮想通貨自体は別に珍しくないはずであるが、なぜリブラだけが警戒されているのか?
 伝わってくる断片的な解説から考えると、最大の問題点は以下のように思われる。

 リブラの発行は、例えばドル建てのリブラであるなら必ずドル預金や米国短期証券などが裏づけとされており、その価値自体に問題があるわけではなさそうである。もちろんドル建て以外のリブラもあるようで、それぞれの通貨建ての預金や政府短期証券が裏付けとされるはずである。

 つまりリブラはビットコインのような値上がり目的の(価値が良くわからない)仮想通貨ではなく、その価値は各通貨建ての流動性のある資産で保全されている。そのリブラがブロックチェーン技術を使って各国通貨の代わりに世界中で決済や送金に「低コスト」で利用されることになる。これだけ見ると別に新しい仕組みでもなく、日本のメガバンクなども決済用に準備している仮想通貨とあまり変わらない。
 
 それではなぜ各国の金融当局が過剰反応しているのか? 確かにフェイスブックは全世界で27億人の利用者がいるそうで、その一部でもリブラを利用すれば相当な利用者数となり、それを目当てに大手カード会社やウーバーなども参加するようである。確かにその利用量は驚異的なものになるかもしれない。

 しかし問題はそこでもない。

 最大の問題は、本来は国家に帰属している「通貨発行益」が民間企業であるフェイスブックに移転してしまうことである。ドル紙幣とは、FRBが米国債を買い付け、それを小口・無利息・無記名のドル紙幣に「分割」していることはよく知られている。米国金利も低下したとはいえ、まだ3か月短期国債で2.1%、2年国債で1.75%ほどの利回りがある。

 リブラに利息が付くとは聞いていないため、この利回りは(金利は)本来米国政府に帰属するものであるが、それがそっくりフェイスブックあるいは同社が新たに設立するリブラ財団に帰属することになる。

 日本や欧州のように、10年国債あたりまでがマイナス利回りとなっている国(通貨)は無理でも、少なくともドル建てのリブラは「膨大な利息収入」が稼げることになる。

 それが主に米国金融当局者が批判する「既存の銀行システムにタダ乗りする仕組み」ということになる。

 ただ世界を見渡せばこのパターンもすでにある。中国のアリババがアリペイから出し入れ自由で、決済にも使えて、しかも金利まで付く余額宝をすでに発行している。最近は1人あたりの預け入れ上限が何度も引き下げられているが、それでも発行総額が2兆元弱(32兆円)ほどある。

 金利も最近の中国の金融緩和を受けて引き下げられているが、それでも利回りが2%台後半と、銀行預金(1年定期)の1.5%を大きく上回っている。しかし別に中国政府は余額宝をより規制するつもりはなさそうである。そこは共産党一党独裁の中国経済の中にしっかりと組み込まれているからであろう。

 しかし同じことをフェイスブックが米国をはじめ資本主義社会で大々的に始めれば、そうはいかない。

 またこのリブラのニュースが出てから、元祖仮想通貨であるビットコインの価格も急上昇していた。年初の3500ドル台から、6月26日には一時13800ドルまで約4倍になっていた。

 しかしこの価格急騰には、以前から噂されている「不正は仕掛け」が今回もあったようである。それは本来は発行額と同額の米ドルを裏付けとしているはずの仮想通貨・テザーを大量に発行し、その資金で大量にビットコインを買い、その価格を上昇させているとの噂である。テザーの価格はドルと連動するため基本的にはあまり動かないため、ビットコインの価格上昇分が儲けとなる。

 しかしテザーは、本当に発行額に見合うドルを手当てしているかは確かめようがない。その辺の疑惑もあり、ビットコイン価格は7月2日に一時10000ドルを割り込んだ。

 そのタイミングをとらえてテザーが2億ドル新たに発行されている。ドルの価値自体はその間にそれほど値下がりしていないため、必要なドルを手当てしていなかったテザーが新たにドルを手当てしたというより、単純にビットコインを買い支えるために(またドルを十分に手当てしていない)テザーを新たに発行したと考えたほうが自然である。

 リブラとは直接関係のない話であるが、このテザーとリブラを含む仮想通貨について、7月8日更新のThe Stray Times有料版の特別特集で、詳しく解説する。

2019年7月3日