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バルト三国のマネーロンダリングとは

| 中央銀行・金融情勢・提言編 | 欧州 | 2019年4月09日 |

 久々の更新となるため、改元やゴーン再逮捕(本当はその妻の海外逃亡のほうが後で問題が大きくなると考えるが)など書くべき話題がたくさんある。本日はその中から日本ではほとんど報道されていないこの話題にした。

 日産自動車とゴーンについては、近々スタートする予定の「有料版」で日産自動車の過去から事件の近未来まで「たっぷり」取り上げる予定である。「有料版」の内容については本欄で少しずつご紹介していくが、何しろ「有料」なので特色ある話題を「山盛り」にするつもりである。

 また改元については畏れ多いので控えようと思っていたが、どうしても「気になっているところ」だけ簡単に付記しておく。「令和」は日本の万葉集からの引用であることは評価できるが、万葉集でも漢文で書かれた序からの引用であるため、その漢字の意味をよく考えなければならない。
 
 1180年に以仁王(もちひとおう)が、平氏打倒のため諸国の武士や寺社に蜂起を促す「令旨」を発したという史実がある。ここで以仁王とは高倉天皇の兄宮であるが、天皇になられたことはない。つまり「令旨」とは皇太子など天皇ではない皇族のご命令を意味し、天皇のご命令は「勅旨」あるいは「論旨」である。

 そんな「令」を含む「令和」とは、5月1日に即位される新天皇の御代を表す年号としては礼を欠くものと考えるが、さて「専門家」の意見はどうなのであろう?

 そこでやっと本題の「バルト三国のマネーロンダリング」である。

 まずバルト三国とは、バルト海の東岸、フィンランドの南に南北に並ぶ3か国のことで、北からエストニア(首都はタリン)、ラトビア(同リガ)、リトアニア(同ビリュニス)となる。3か国とも1991年に旧ソ連から独立し、EU、OECD、NATOに加盟し、ユーロを通貨としている。

 3か国を合計しても面積が175,000平方キロ(北海道の約2倍)、人口が700万人くらいである。ただ3か国の歴史や民族、言語はかなり違っているが、そこを書いていると長くなるので割愛させていただく。第二次世界大戦時にユダヤ人数千人にビザを発給し命を救った杉浦千畝氏は、リトアニアのカウナス領事館に赴任していた外交官であった。

 そして最近、このバルト三国のうちリトアニアを除くエストニアとラトビアで、主にロシアの資金を大量にマネーロンダリングしていた事実が発覚している。旧ソ連崩壊のどさくさに油田など国家財産をタダ同然で横領したオリガルヒ(大半がユダヤ人)の巨額資金の移動や、最近では厳しい経済制裁を潜り抜けるためなどロシアにはマネーロンダリングの「需要」は大量にある。

 本年2月19日、デンマーク最大手のダンスケ銀行がバルト三国とロシアでの事業を閉鎖すると発表した。これはまずエストニア当局がダンスケ銀行に対し、8か月以内に預金返還や他行への融資債権売却や移管を完了させるように通告したもので、それを受けてダンスケ銀行もエストニアだけでなく、ラトビア、リトアニア、ロシアとの事業も閉鎖すると発表している。

 一応はマネーロンダリングを摘発したいバルト三国とロシアによる事実上のダンスケ銀行追放であるが、もちろんダンスケ銀行だけが悪いわけではない。しかし2007~2015年において、ダンスケ銀行を通じた主にロシア関連の(決してロシアだけではないはずであるが)マネーロンダリングは2350億ユーロ(27兆円)と推定され、欧州金融史上最大のマネーロンダリングとなる。

 しかしこれも氷山の一角で同期間にエストニアを通過した資金総額は(すべてがマネーロンダリングとは限らないが)9000億ユーロ(120兆円)もある。ちなみにエストニアのGDPは260億ドル(3兆円)である。

 また3月28日には、スウェーデンの大手銀行であるスウェドバンクのボンネセンCEOが、1350億ユーロ(17兆円)ものロシア資金のマネーロンダリング疑惑で解任されている。

 こちらの「顧客」には、親ロシア時代のウクライナのヤヌコビッチ前大統領やトランプ大統領の選挙対策本部長だったポール・マナフォート(禁固刑が確定)などが含まれているようである。

 また2018年2月にはラトビアのABLV銀行が、こちらは北朝鮮とのマネーロンダリング疑惑で資金繰りが悪化して破綻している。

 ダンスケ銀行もスウェッドバンクもABLV銀行も(これ以外にもあるはずであるが)、マイナス金利が続くユーロ圏において「つい儲かりそうな取引に手を出して深みにはまった」ことになり、エストニア、ラトビア、それに加えてキプロスは以前からマネーロンダリングの温床と言われていた。

 これらの国はユーロ圏(東欧)においてプライベートバンクを中心とした金融立国を目指していたはずであるが、残念ながらスイスやリヒテンシュタインのように長期資金が集まらず、「怪しげな資金」がマネーロンダリングのために瞬間的に通過するだけだったようである。

 これらも結果的には不良資産が積みあがることになり、そうでなくても不良資産が増え続けるユーロ圏の金融界の「地雷」になる。

 ECBは本年中は利上げを見送りマイナス金利政策を続けるようであり、ユーロ圏でも「目先の収益」のためについマネーロンダリングなど不正取引に手を出してしまう銀行がまた出てくるかもしれない。

 そして同じく低金利に苦しむ日本の金融界においても、決して「他人事」ではないはずである。