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MMT(Modern Monetary Theory)とは何か?

| 中央銀行・金融情勢・提言編 | 日本 | 為替編 | ドル(円) | 2019年3月18日 |

MMT(Modern Monetary Theory)とは何か?

 直訳すると「現代貨幣理論」となり、最近になって急に米国の民主党左派の間で主張されるようになった経済理論である。この民主党左派とは、トランプ現大統領の共和党保守派と完全に対極をなし、このまま来年(2020年)秋の大統領選挙まで「ことあるごとに」出てくる政策論点となりそうである。

 MMTとは理論的にはごく単純で、自国通貨建てで(米国であるならドル建てで)借り入れができる国は、財政赤字を心配する必要がないため、(さすがに金利や物価が高騰しない限りはという条件が付くはずであるが)どんどん国債を発行して福祉や社会資本の充実などに充てるべきという一種のポピュリズム的な(要するに大衆迎合的な)政策に結びつく。

 つまり2020年の大統領選挙とは、(弾劾もされずに再選を目指すとして)何が何でも米国第一主義を掲げる現職のトランプ大統領と、ポピュリズムを掲げる民主党左派(さすがにまだ候補者まで絞り切れないが)の対決となりそうである。もっとわかりやすくいえば金持ち優遇のトランプと、庶民の生活向上を掲げる民主党左派の対決となる。

 もちろん現時点でMMTは、主流派経済学者や著名企業の経営者(そしてもちろんFRBも)の間で「すこぶる」評判が悪い。対外取引のない閉鎖経済でない限り、通貨暴落やハイパーインフレを招くリスクがあるというのがその教科書的理由である。

 つまりMMTとは単なる「財政赤字容認論」であるが、もう少し付け加えれば、物価や金利が安定しているうちは財政赤字の拡大を気にせず福祉や社会資本の充実にどんどん資金を振り向け、それで経済が充実してくれば将来的に増税して政府の借金を返せばよいとなる。つまり無理に財政赤字を減らそうとして景気の腰を折ってしまうことこそ問題であるというのがポイントである。

 こう書いてくると、「まんざら暴論とは決めつけられない」となるかもしれない。

 現在でも世界の経済政策は、景気刺激のために一時的な財政拡大は容認するが、長期的には財政再建は必要との考えがベースとなっている。ところが問題は(とくに)リーマンショック以降、金融緩和と合わせて積極財政は繰り返し発動される経済政策となってしまっているため、世界的に一向に財政赤字が減らないことである。

 MMTの弊害である金利上昇や物価上昇は、少なくとも先進国の間では全く問題とされていない。特に日本では金利や物価が一向に上昇しないことの方が問題とされており、ほかの先進国でも似たような状況となっている。

 このMMTは、自国通貨建ての国債が安定的に消化されることが条件となっており、必ずしも日銀のような中央銀行による大量の国債買い入れを条件とはしていないが、少なくとも日本は日銀が国債を大量に買い入れて10年国債利回りをゼロ近辺にくぎ付けしながら(直近では再びマイナス利回りとなっている)、一方では2%の物価上昇を金融政策の目的としている。オイルショックでも来ない限り実現するはずがない。さらにそれに加えて消費税を再引き上げして財政再建を強行しようとしていることになる。

 この現在の日本の経済政策とMMTを比べると、どちらが「まとも」であるか?

とくに米国の民主党左派の主張するMMTとは、国債を大量発行して(大統領選を意識した政策であることは確かであるが)一般庶民の生活向上に充てようとするものである。そうでなくてもトランプ政権における財政赤字は2019年会計年度(2019年10月~2020年9月)から4年連続で1兆ドルを超え、現時点ですでに連邦債務残残高は22兆ドルまで膨らんでいる。

連邦債務残高は、ブッシュ(息子)政権がスタートした2001年初めは5兆ドル、オバマ政権がスタートした2009年初めは10.8兆ドル、トランプ政権がスタートした2017年初めは20兆ドルだった。現時点で22兆ドルであるとすれば、ブッシュ、オバマ、(まだ途中であるが)トランプという「たった」3人の大統領で、連邦債務の77%に相当する17兆ドルを積み上げたことになるが、10年国債利回りは2%台半ばでしかない。

つまり米国では少なくとも2000年以降はMMTが「「結果的に」実践されていることになるが、問題はその恩恵の大半が一般庶民ではなく一部の資産家や大企業に向かっていることである。この辺を頭に入れて2020年の大統領選を考えなければならない。

 本誌も単純に財政赤字拡大を容認するだけのMMTには賛同できないが、その基本的な考え方は「ちょっと頭に入れておく」べきだと考える。現在の日銀政策委員会を席巻しているリフレ派は、つい一昔前までは「異端」としか見られていなかったはずである。今後の日銀の金融政策もこの辺を頭に入れて考えなければならない。

 ただもし米国でMMTの議論がもっと盛り上がってくれば、今度こそ「それなりの円高」は覚悟しておかなければない。しかしアベノミクスが始まって以来、世界で最も物価が上がらない(金利も上がらない)日本の円がじり安を続けている状況こそ異常であると考えるべきである。

 つまり円は「世界で最も目減りしない最強通貨」でありながら、その価値が上昇しない(じり安になる)不思議な通貨なのである。