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ゴーン保釈を認めた東京地方裁判所と東京地検特捜部の「腹のくくり方」

| 個別企業編 | 日産自動車 | 2019年3月05日 |

 本コラムは昨日(3月4日)更新したばかりであるが、言いたいことが山ほどあるゴーン元日産自動車会長について「急変」があったため、連日の更新となる。

 東京地方裁判所は本日(3月5日)昼過ぎ、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)と会社法違反(特別背任)で起訴されているカルロス・ゴーン元日産自動車会長の保釈を認める決定を下した。

 保釈保証金は10億円であるが本日中に納付できなかったため、本日中の保釈はない。また東京地検特捜部は保釈決定を不服として東京地方裁判所に準抗告しており(別の判事が決定することになる)その決定も本日中に出される可能性が強い。しかしが、準抗告で決定が覆ることは難しく、明日にでも保釈となりそうである。その理由は同じ裁判所の「仲間の」判事の決定を覆すことになることと、すでに報道各社が「ゴーン保釈」と大々的に報道しているからである。

 ゴーン被告については主任弁護士が大物ヤメ検の大鶴弁護士から、「無罪請負人」の異名を持つ弘中弁護士に変更になってからまだ1か月たたないが、大鶴弁護士が1月に2度保釈を申請して却下されており、弘中弁護士に交代したらすぐに保釈となったと簡単に考えては本質を見誤る。

 まず大鶴弁護士のような大物ヤメ検の役割は、古巣の検察庁の上層部と掛け合い、ちょうどいい「落としどころ」を模索することである。つまり依頼人(ここではゴーン被告)の名誉もある程度守りながら、判決では少しだけ軽めの有罪にしてしまうことである。つまり大物ヤメ検は無罪を求めて検察庁と本気で戦うことはほとんどない。

 それに対して在野の弁護士である弘中弁護士は、検察庁に遠慮する必要もないため、依頼人と検察側と裁判所の意見もよく聞き入れて作戦を立てる。今回の保釈決定も、別にマジックを使ったわけではなく、過去2回の保釈却下の理由となった「逃亡と証拠隠滅の可能性」をできるだけ排除した保釈案としただけである。

 具体的には国内に住居を制限して監視カメラなどで行動を観察する、パスポートは弁護人が預かり海外渡航を不可能にする、機能が限定されたパソコンや携帯電話のみを使い関係者と会話ができないようにするなどを条件に加えただけである。

 これは前任の大鶴弁護士も思いつかなかったはずがないが、そもそも大物ヤメ検の役割を完璧にこなすためには、否認を貫いたままで、まだ公判前整理手続きも始まっていない段階でゴーン被告を「本気で」保釈しようと考えなかっただけである。というよりも古巣の東京地検特捜部も、この程度の「小細工(失礼!)」で逃亡や証拠隠滅が完全に回避できるはずがない(裁判所が認めるはずがない)とタカをくくっていたフシもある。

 そういえば東京地方裁判所は1月10日に金融商品取引法違反で二度目の逮捕となっていたゴーン被告の拘留延長を却下したことがあった。ここでは東京地検特捜部が「まだ準備中であったはずの」特別背任で再々逮捕して経現在に至る。

 確かに否認を続ける被告の保釈を認めず、長期間拘留する「人質司法」には海外からも批判が多いことは事実であるが、もし東京地方裁判所が今回この海外からの批判だけを気にして(あるいはゴーン氏が大物であるから)特別に保釈を認めたのであれば大いに問題である。

 確かに最近になって裁判所は否認したままの日本人被告を保釈した例がいくつかある。しかしもしそれが海外からの批判が裁判所に集まらないように、またゴーン被告の保釈だけが目立たないように保釈例を積み上げただけなら、もっと大問題である(考えすぎかもしれないが)。

 今回は保釈だけの問題で、実際の刑事裁判の行方については全くの白紙状態であるが、特に形式犯である金融商品取引法違反は、数ある判例に従って自動的に有罪判決が出るはずである。しかしそこまで心配になってくる。

 もう少し高い位置から考えると、今回の問題は日産自動車(それに子会社の三菱自動車)がそろってルノーと経営統合し、日本の会社ではなくなってしまう(わかりやすく言えば資産はすべて持ち去られて社員はほとんどクビになる)恐れも強く、国策的にも注目しなければならない事件であるはずである。

 日本の自動車産業を管轄する経済産業省(ほとんど官邸とイコールのはずであるが)を中心に、真剣に取り組まなければならない問題である。国会で連日取り上げられている過去の賃金の不正確さも重要であるが、それよりはるかに大きな問題が目の前にあることになる。

 東京地検特捜部が完全に「腹をくくっている」のであれば、批判を覚悟で今夜中にイエメンとレバノンで消えた約50億円についてゴーン被告を再々々逮捕(つまり4度目)することもできるはずである。本誌は個人的にゴーンと(その腰巾着だった日本人を含む何人かは)完全にクロだと考えている。それが今日のような例外措置で逃げ切ることがあってはならない。

平成31年3月5日