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ゴーンの逮捕・拘束と仏政府による東京五輪招致疑惑捜査との関係は?

| 日産自動車 | 外交編 | フランス | 日本 | 2019年1月14日 |

 

2020年の東京オリンピック・パラリンピック招致に関する贈収賄疑惑をめぐり、フランス司法当局は1月11日に日本の招致委員会(解散)委員長で日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長を訴追する(後述)手続きに入ったとル・モンド紙(電子版)が伝えている。

同じ1月11日には東京地検特捜部がゴーンを金融商品取引法違反と新たに特別背任事件として追起訴している。決して偶然ではないはずである。ゴーンは同日、東京地裁に保釈を申請したが、判断は三連休明けの15日以降となりそうである。ただ特別背任事件の捜査が重要局面を迎えているため、今回は裁判所も保釈を却下するように思われる。

それではこの2つの「事件」は関連しているのか?

一番単純に考えると、外交の世界ではこのような報復措置は常識であるため、その答えはもちろん「その通り」となる。

できるだけ簡単に解説する。ゴーンをめぐる動向は連日報道されているため、わざわざ繰り返す必要はないが、これもそもそも「外交問題としてどう考えるべきか」にも関連付けて考えなければならない。

オリンピック招致をめぐる贈収賄事件とは、開催決定となった2013年9月時点の国際陸連会長で、IOC委員としてもアフリカ票をまとめられる実力者であるラミン・ディアクが、ロシアのドーピング問題のもみ消しに巨額賄賂を受け取っていたとしてのちに逮捕されている。この捜査を主導していたフランス検察が、東京五輪招致をめぐっても、日本の招致委員会がラミンの息子であるパパマッサダ・ディアクの関係するシンガポールの実態の乏しい会社に200万ドル(2億3000万円)が支払われていることを見つけ出した。

当時も日本では竹田会長を国会招致したり、一応は「騒ぎ」となったが、「招致に関する正当なコンサルタント手数料である」として、ほどなく鎮静化してしまった。そもそも五輪招致に賄賂が飛び交っていないと考えるほうが不自然で、招致予算も前回(リオデジャアネイロに負けた)は150億円、今回も最終的に89億円もの巨額予算が使われており、使途不明金も多い。

問題はこの200万ドルが本当に五輪招致に効果があったのか?であるが、ラミン・ディアクは実力者でも、そのドラ息子のパパマッサダは何の実力もないプータローで、当然に何もしていなかったはずである。

それではなぜこんな単純なペテン話にひっかっかったのか? じつはこの息子の会社を招致委員会に強力に売り込んだのが電通で、しかもその200万ドルも「かなりの部分」が日本の関係者に還流している。それには電通の専務(当時)が深くかかわっていたはずであるが全く問題にはならず、この専務(当時)は今も森元首相がトップのオリンピック組織委員会(招致委員会とは別組織)に深くかかわっている。

余談であるが、オリンピックとはIOCの巨額ライセンスビジネスで、あらゆるスポンサー収入や放映権料はIOCが全額吸い上げる。そこから半額が開催地に支払われることになっているが、その金額は大体7000億円ほどのものである。ところが東京オリンピックの運営費総額は3兆円近くかかるはずで(1兆3500億円といわれているがこれは会場・設備費用だけである)大量に不足金が出る。これはすべて都民(国民ではない)の負担となる。小池都知事はその辺を全く理解していない。

話を戻すが、フランス司法当局がJOC会長であり、日本で唯一のIOC委員(しかも自国開催となる東京オリンピックまではマーケティング委員長の要職にある)のたけだ竹田恒和氏を「贈賄」の容疑で捜査していることになる。捜査自体は昨年夏ころに始まっているため、日産自動車のゴーン逮捕とは無関係と思われるが、ゴーン逮捕後の昨年12月20日にはフランス司法当局では正式な裁判の準備にかかる「予審」を請求している。冒頭で起訴と書いたのはこの「予審」請求のことで、日本における起訴とは意味が違う。

しかしフランスの司法制度における「予審」とは裁判所検事が捜査するもので、相当に有力な証拠がそろっていることを意味する。その結果、竹田氏のIOCにおける資格停止、さらには東京オリンピック返上に追い込まれる恐れまで出てきた。

今から考えると、1月10日に日本の裁判所がゴーンの拘留延長を異例の却下とした背景には、元皇族でもある竹田氏を守る意図があったと考えられる。ふつうは裁判所は特捜部が最強と考えているため、特捜部の要求には何でも自動的に許可を出すところ、それを却下した理由がようやくわかったような気がする。

しかし特捜部は翌11日には、ゴーンを特別背任で再逮捕してしまったため、さらにフランス司法当局ひいてはIOCを敵に回してしまったことにもなる。

ここで日産自動車問題と、日本ではとっくに忘れ去られていたオリンピックをめぐる賄賂支払いが(しかもその一部が日本に還流している)外交問題に格上げされたことになり、今後の展開が俄然複雑化してきたことになる。

本誌は「(フランスに)売られた喧嘩は負けるわけにはいかず、国益をかけて戦うべき」と考えるが、同時に特捜部をはじめ日本の検察庁の「人質捜査」など問題の多い捜査方法が是正される大きなチャンスであるとも考えているため、なかなか複雑な心境でもある。

続編を書く機会も増えそうである。

 

平成31年1月14日