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たまには中国の金融政策も注目してみよう

| 中央銀行・金融情勢・提言編 | 経済編 | 中国 | 中国 | 2019年1月05日 |

あけましておめでとうございます。

本日(1月4日)のNYダウは746ドル高の23433ドルとなり、昨日(1月3日)の660ドル安を完全に取り戻し、昨年末の終値である23327ドルも何とか回復した。

その理由は発表された雇用統計が好調だったこともあるが、中国人民銀行が預金準備率を1月15日と25日に0.5%づつ引き下げ、最終的に大手銀行で13.5%、中小銀行で11.5%にすると李克強首相が発表した影響が大きいようである。

通商戦争で徹底的に中国を叩いている米国の株式市場が、その中国の金融政策の変更で息を吹き返したのも皮肉な話であるが、ここのところ「すっかり蚊帳の外に置かれていた」李克強首相が経済政策の変更にしばしば登場することも気になっている。経済オンチである習近平国家主席が頓珍漢な指令を乱発していた昨年までより中国の経済政策が「まともなもの」になるとも期待できる。

もちろん上海総合株式指数もハンセン指数(こちらは米国市場の影響を大きく受ける)も急上昇している。

さて預金準備率とは何ぞや? 日本など先進国ではすっかり「死語」になっているが、中央銀行が市中銀行預金の一定割合を強制的に無利息で預金させ、金融が緩みすぎて経済が過熱しないようにする仕組みである。まだ経済が発達途中である(はずの)中国の中央銀行である中国人民銀行では、2018年初めの17.0%(大手銀行向け)を14.5%まで引き下げていたが、ここでさらに引き下げてそれだけ市中に資金を供給し、経済停滞を防ごうというものである。

中国人民銀行の準備預金は22兆元ほどあるため、まずそれを0.5%引き下げると、報道されているように8000億元(12.6兆円)ほどの資金が市中銀行に供給され、貸し出しに回されて中国経済を下支えすることが期待できる。中国経済は日本など先進国と違い、まだまだ資金需要が旺盛であり、金融政策はそれに常にブレーキを掛けていなければならないが、そのブレーキを少しだけ緩めることになる。

しかし厳密に考えるとこの計算は正確ではない。なぜなら新たに供給される資金を市中銀行が新たに貸し出せば、それで経済活動が活発になりその資金は回りまわって銀行に還流するため、また新たな貸し出しに回せることになり、中国経済の規模拡大はもっと大きくなるはずである。しかしその拡大された資金供給は、経済活動に回されるというより手っ取り早く不動産投資などに回り、バブル拡大やインフレ高進のリスクもある。ここは「やってみなければわからない」賭けであるが、方法論としては「正解」であると考える。

ところで実際はもう少し複雑である。実は中国人民銀行の資産の大半が外貨資産(主にドル)であり、実は中国経済は外貨(主にドル)の信用力にタダ乗りして未曽有の経済発展を遂げてきたことになる。外国企業は中国に投資しても、ドルに投資していることと大差がなく、(最近はそうでもないようであるが)安い人件費などを享受できていたため海外から中国への直接投資が止まらず、それらの企業が稼ぎ出す貿易黒字が新たにドルを生み出し、中国経済の未曽有の発展を支えていたわけである。

2018年末時点で中国人民銀行の総資産は35.9兆元で(639兆円=日銀よりも大きい)、その中には3.06兆ドル(330兆円)ほどの外貨資産がある。その比率は51%ほどであるが2014~5年ころは85%もあり、外貨資産そのものも4兆ドル近くあった。これは近年になって中国人民銀行の資産が劣化していることを意味し、ひいては中国経済全体に対する信用を落としていることにもなりかねない。

余談であるが2015年夏と2016年初めには、人民元と上海株式が急落する「中国ショック」があったが、その原因は人民元を低下させたため外貨準備の流出が起こり、慌てて預金準備率を20%から低下させたため、併せて猛烈なデフレ政策となったからである。

今回はさすがに同じ轍は踏まないものと思われるが、少なくとも外貨準備は減少傾向にある中で、預金準備率を大幅に引き下げることは、そこで新たに市中に供給される資金が中国経済を活性化させなければ2015~6年と同じようなデフレ政策となってしまう。それよりも新たに供給される資金が経済活動に回らず、手っ取り早く不動産投資などに回り資産価格の上昇やインフレの高進を招いてしまう恐れも強いと考える。

ここからは「あまり信用できない中国の経済・金融統計」を参考にしながら、中国経済から目が離せなくなる「厄介な状態」が続くことになりかねない。

平成31年1月5日