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2018年の株式市場を振り返り、2019年を予想する

| 中央銀行・金融情勢・提言編 | 日本 | 米国 | 米国 | 世界 | 日本 | 2018年12月29日 |

12月28日で日本の株式市場が終了した。同日の日経平均終値(以下、同じ)は20014円と辛うじて20000円台を維持したが(させたが)、2017年末の22764円と比べれ12.8%もの下落となり、年間では2011年以来7年ぶりの下落となった。しかも10月2日に24270円と27年ぶりの高値を付けてからたった3か月弱の12月25日には19155円まで5000円以上の急落となっている。

本年(2018年)はもちろんアベノミクス開始(2012年12月)や日銀の大規模緩和開始(2013年4月)以来、初めての年間下落となる。つまりアベノミクスも日銀の大規模緩和も、結果として息切れしてしまい、そもそも正しい経済・金融政策だったのか?となってしまう。事実日本のGDPも足元の2018年7~9月期は年率1.2%のマイナス成長となっている。

これは日本の株式市場や経済状況だけでなく、世界中のほとんどが同じような状況になっている。比較的経済が好調のように見える米国でも、NY株式市場は(31日まで取引されるが)29日の終値は23062ドルと、昨年末の24719ドルから6.7%の下落となっている。

またNY市場でも10月3日に26828ドルを史上最高値を更新したところから急落となり、12月24日には21792ドルとこれも3か月弱で5000ドル以上の急落となっている。その理由としては米中貿易交渉が難航しているとか、トランプ大統領がFRBの利上げを批判して中央銀行(FRB)の独立が損なわれる恐れがあるとか、マティス国防長官など「良識派」の解任が依然として続いているなどが挙げられているが、はっきりとした理由を特定することは出来ない。

株式市場では特に新興国の株価下落が大きく、アルゼンチンやトルコなどをはじめ新興国全体の平均株価下落率は20%近くなり、またそれに関連して原油や銅など主要商品市況も急落しており、これが株式市場と並び世界経済がはっきりと減速している有力な先行指標となる。

さてここから2019年の世界の株式市場はどうなるのであろうか? だいたいこの時期になると内外の「専門家」がいろいろと予想を繰り広げてくれるが、だいたい同じようなものばかりである。そこで今週は「ちょっと世間が気づいていないはずの大事な要素」を挙げてみることにする。

まず世界経済の潜在成長率がここにきて一段と下がったような気がする。もちろん企業業績は現在のところ世界的に概ね好調であるが、ITの発達により労働の生産性と賃金の伸びが低く抑えられたままで、このままでは世界経済の牽引車ともなる個人消費が息切れしたままとなる。この状態はしばらくのタイムラグを置いて間違いなく世界経済や株式市場を減速させるが、すでにその兆候が現れていると考える。

そもそもリーマンショック以降の世界経済や株式市場を世界的な金融緩和が劇的に改善させたことは事実であるが、これは「将来の世界経済の拡大と株価上昇」を金融緩和・量的緩和という「カンフル注射」で先取りしていただけのような気がする。

ここ3か月ほどの世界の株式市場の急落は、すでにそのサイクルに入っているとは言い切れないが(たぶんにトランプなどが引き起こす政治的混乱の影響の方が大きいとは感じるが)、2019年の株式市場はこの「先取り」された経済成長の鈍化と株価下落が加わるような気がする。

そう書くとリーマンショック以降の世界的な金融緩和・量的緩和で世界中にばらまかれが余剰資金が株式市場に向かうはずで、結局はまた上昇相場に戻るのではないか?と考えられるかもしれない。それはそうかもしれないが、実は「これこそ」2019年の株式市場を占ううえで、最大の攪乱要素(わかりやすく言えば間違う要因)となるはずである。

そもそもリーマンショック直後に震源地の米国ではFRBが市場で買い手が全くいなくなっていたMBS(住宅ローン担保付き債券)を苦し紛れにFRBに押し込んでしまい、同時に市中金利をゼロにして新たな住宅需要を引きだそうと考えたものにすぎない。当時は米国がやむなく国有化した大手住宅金融会(FNMAとFHLMC)を救済することが最優先課題だったからである。この2社が倒産すれば、米国経済もほとんど倒産していたはずである。

それを「後付け」で経済対策や雇用対策だということにして世間の批判を避けただけの話である。しかし世界には金融緩和・量的緩和=景気対策・雇用対策という「間違ったとまではいわないが、その因果関係が今一つはっきりとしない」金融緩和・陽的緩和に日銀をはじめ世界の中央銀行が追随したわけである。

その動機はともかくとして、世界経済が「少しくらい回復して」「株市場が大きく上昇したこと」も事実だから、それはそれでもいいではないか?とも考えられるかもしれない。そこは否定しないが、向こう数年間の(あるいはもっと先までの)経済回復と株価上昇を「先取り」していただけであったなら、いったいどうなるのであろう?

そういう目でここ3か月ほどの世界の株価と商品市場の急落をみてみると、また違った景色が見えてくるはずである。

そこで世間ではもう一度世界経済が低迷し株価が下落すれば中央銀行が金融緩和・量的緩和に舵を切ればいいのではないか(日銀などまだ金融緩和・量的緩和を止めていない中央銀行は追加金融緩和。量的緩和に踏み切れいいのではないか)と考えている市場参加者や政策当局者がほとんどであると思われる。

しかし少し前に書いたように世界の潜在成長率がここまで下落していると、金融緩和・量的緩和といった「インフレ助長政策」は効果が無く、デフレ(経済低迷)に対する有効な処方箋ではなくなっているはずである。どこにも資金需要が出て来ないため、金融緩和・量的緩和を行っても意味がないわけである、これは現在の日銀の金融政策と日本経済の関係が最もそれに近いと思われるが、これが全世界に蔓延することになるはずである。当然に経済は低迷し、株式市場は下落することになる。積みあがった余剰資金は何の役にも立たないからである。

その傍証になるかどうかはわからないが、2017年9月からFRBの保有資産売却(正確には再投資の停止)に利上げを組み合わせるという「かなりのデフレ政策」に踏み切ったFRBで、その間にReserve Balancesが24%も増加していることは不気味である。

Reserve Balancesとは日銀の当座預金のようなもので、市中銀行が「不要な資金」をつみあげていおくところである。FRBは利上げに加えて保有資産の売却というかなりのデフレ政策をとっているため、市場が考えているように米国経済が好調であるなら当然に資金需要が大きくなり、Reserve Balancesも減少していなければおかしい。

それが大幅に増加しているということは、米国の資金需要は大きく減っており、本当の経済成長が続いているとは言えないことになる。一部の大手IT企業による生産性の上昇が寄与しているだけなのかもしれない。これでは米国の経済全体が拡大しているとはいえず、いずれ株式市場も含めて「尻すぼみ」となるような気がする。

いずれにしても、ますます難しくなる2019年は「すぐそこ」に来ているのである。

 

平成30年12月29日

 

 

 

 

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