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やっぱり裏目に出た孫正義の「禁じ手」

| 個別企業編 | 株式編 | 日本 | ソフトバンク | 2018年12月21日 |

昨日(12月19日)ソフトバンクが東証一部に新規上場した。紛らわしいが、以前から上場している会社は親会社のソフトバンクグループで、今回はそこから携帯電話部門を切り出しソフトバンクとして新規上場させ、単一銘柄では史上最高となる2.6兆円を株式市場から吸収していった。それまでの記録はバブル期のNTT(2.3兆円)だった。

ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は、臆面もなく「今までは通信事業に97%、投資事業に3%の力を投入していたが、これからは投資事業に97%、通信事業に3%の力を投入する」と発言しており、その一環として携帯電話子会社となるソフトバンクの約33%を売り出した。もちろんその2.6兆円は親会社でこれまでその100%を保有していたソフトバンクグループに入り、「新たな投資事業資金」となってしまう。

ところがこれからもソフトバンクの約67%を保有するソフトバンクグループは、依然としてソフトバンクが連結子会社であり、完全支配を続けるだけでなく、その資産の100%を連結財務諸表に取り込める。つまりこの2.6兆円とは「手品のように」出てきた2.6兆円なのである。

もちろん新規上場したソフトバンクは、5%配当を維持するとか、純利益の85%を株主に還元するなどと言っているが、仮にその通りだったとしてもソフトバンクグループにとっては「あまり痛くない」資金流出となるだけである。そのソフトバンクの67%は依然として親会社のソフトバンクグループが所有しており、受けとるものも最も多いからである。

こういうのを「親子上場」と呼び、バブル期には結構盛んに行われていたが、現在は「禁じ手」とされていたはずである。もっとも2015年に上場した日本郵政は、堂々と子会社のゆうちょ銀行とかんぽ生命を同時上場させ「究極の親子上場」となり、政府自ら「禁じ手」を使っている。明らかに株式市場においては、親子会社の資産がダブルカウントされることになる。

さらにこれまでソフトバンクの年間1兆円近い利益の大半は、この代表的な「規制に守られた寡占事業の代表」である携帯電話事業が稼ぎ出していた。これは同業のNTTドコモもKDDIも同じではあるが、ソフトバンクはその膨大な利益を利用者に値下げやサービス向上などで還元せず、とくに最近はひたすら日本の携帯電話事業や利用者に何の関係もない海外のネット企業やライドシェア企業や自動運転企業などにつぎ込んでいる。大変にハイリスクな投資である。

国民全体の資産である電波を格安価格(2015年に支払った使用料はたった165億円)で3社独占で借り、膨大な利益を稼いでいながら、特にソフトバンクグループはすべて日本の利用者にとって直接役に立つとも思えない海外企業の買収に使っていた。

そして今回は、それだけでも飽き足らず支配権は維持したままその一部を換金したことになる。信義的には大変に問題がある行動であるが、孫社長にそれを言っても全く無駄なのでこれ以上は止めておく。

ソフトバンクグループはグループ全体で16兆円を超える有利子負債を抱えており、その内4兆円を抱える米スプリントをTモバイルに支配権込みで売却することにしたがFCC(米通信委員会)の認可が遅れており、また共同投資家と頼むサウジアラビアのムハンマド皇太子の近辺も最近は騒しいため、ここは信義などお構いなしにソフトバンク(通信子会社)の資金化に踏み切ったわけである。最終的には過半数を残して49%まで売却するようである。

その売出し価格は、本来のブックビルディング方式を省略して早々と1株=1500円と決めており、押し付けられた各証券会社もその販売にはかなり苦労したようである。

上場初日は初値が1463円となったが、この1463円とは証券会社への販売手数料を吐き出させる価格で、さらに上場後のマーケットメイク用に各証券会社が用意した「新規買い玉」の1億株をすべて投入させて「売り気配」とならないようにしたものだった。それでもそこからずるずると値を崩し初日の引け値が1282円となった。本日(12月20日)も1176円の安値まであったが、各証券会社に買い支えを要請したようで引け値は1296円となったが、依然として売出し価格の1500円を大きく下回ったままである。意味のない計算であるが、ソフトバンク株を購入した顧客は全体で3500億円をすでに「吹っ飛ばして」いる計算になる。

本日(12月20日)の日経平均が年初来の安値を更新した「最大の戦犯」がこのソフトバンクであることは間違いない。「因果応報」という言葉があるが、その被害分はすべて投資家に押し付けて「もう携帯電話事業なんか興味ないよ」と言っているのが孫社長なのである。

 

平成30年12月20日