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ゴーン再逮捕 ここから日産自動車はどうするべき? (続き)

| 個別企業編 | 日産自動車 | 2018年12月11日 |

かねてから本欄で予想していた通り、本日(12月10日)ゴーン日産自動車元会長、ケリー同元代表取締役、それに法人としての日産自動車が金融商品取引法「だけ」で起訴され、さらにゴーンらは同日中に別の期間(2016年度~2018年度)における同容疑で再逮捕された。拘留期限は12月30日で、詐欺や背任などは構成要因が難しいためこれ以上追及しないと考えるため、再々逮捕は「ない」と言い切れる。ただ否認を貫いているようなので、そこ(12月30日)でも保釈される可能性は低い。証拠隠滅とか海外逃亡など「裁判所が保釈を認めない理由」には事欠かないからである。そのまま刑事裁判が始まることになるが、そこまで拘留される可能性もある。特捜部が起訴した刑事事件で積み上げた輝かしい200連勝を止めてしまうことはあってはならないため、ゴーンを保釈して「新たな検察に不利な材料」がどこからか出てきたら大変なので、念には念を入れることになる。

相変わらず日本の報道機関は特捜部が意識的に流す「ゴーンの悪事」をタレ流すだけで役に立たないため、外電に注意していたら本日(現地9日)のウォールストリートジャーナルに、西川・現CEOが最近の業績不振の責任を追及され11月にもゴーンに解任されるはずだったと報じている。外電だから常に正しいということはないが(オリンパス事件では外電が誤った情報を無責任に垂れ流していた)これは本誌も把握しており99%真実である。つまり西川CEOは「自分の保身のために自分を能力以上に引き上げてくれたゴーンを検察に売って失脚させ、あわよくば日産自動車におけるゴーンの権限を独占したいと考えた」という単純な構造となる。西川CEOの年俸もゴーンのおかげで5億円ももらっている。日産自動車は明らかに株主総会でしか承認されない役員報酬の総額を大きく上回っている会社法違反であるため、積極的に関与していたなら西川自身も逮捕される可能性がある。しかし検察に対する情報提供者なので、それはないと安心しきっているようであるが、本誌は西川CEOも逮捕される可能性も15%くらいあるような気がする。

さてそんな日産自動車は、昔から実力者を追放するクーデターの歴史であった。古くは川又社長時代に絶大なる権限を持って経営にも介入していた労組の塩見委員長(畏れ多くも塩見天皇と呼ばれていた)の追放劇などがあるが、そもそも1999年の経営危機時に経営責任を取らされないようルノーに日産自動車を売り渡した塙社長(当時)の行動も立派なクーデターである。ここでは20%の出資が限界であるというルノーのシュバイツアー会長(当時)を説得して、わざわざ経営権を売り渡す44%まで出資比率を引き上げたのも塙である。その追加分は経営危機時に発行した新株予約権で、3年くらいたって日産株が急上昇してから(もちろん発行時の条件で)ルノーが行使したものの、日産自動車はその資金でそっくりルノー株式を15%(もちろん時価で)購入させられている。これが現在日産自動車が保有する議決権のない15%である。

一連の検察庁の行動には、フランスを含む海外からだけでなく日本からも一部批判が出ているが、ここは日本なので検察は遠慮せず日本の法律に基づいて行動すればよいだけである。逆に言えばゴーンらを日本で拘留している間に、ルノーとの資本関係も含めてすべて解決させなければならない。本誌は別に検察を応援しているわけでもなく、せめて日本のために最低限の義務は果たしてほしいと思っているだけである。

本日(12月10日)の日産自動車は945円(時価総額は4兆円)、ルノーは55.50ユーロ(邦貨換算2.1兆円)である。三菱自動車は日産自動車とセットで考えるしかないが、665円(9900億円)である。何度も書いているが、ルノーは日産自動車の43.4%、日産自動車はルノーの15%(議決権なし)を保有している。国策のため(西川ら現経営陣のためではない。余談ながら元レースクィーンまで現経営陣にいる)もはや一刻の猶予もない。強引に経営統合させようとしているマクロンが、国内のデモ等でモタモタしているうちに素早く動かなければならない。

前回分を書いてからさらにいろいろ考えたが、日産自動車によるルノーへの全株TOBしかない。それなりのプレミアム(25%くらい?)を乗せなければならず、ルノー取締役会は必ず反対するが、ここは日本なので日本のTOBルールに従って進めればいいだけである。TOBルールは各国ともほとんど同じである。ただ日本の経営者は過半数(51%)だけ確保すればよいと考えているようであるが、それは間違いで、富士フィルムのようなことが起きることになる。ルノーの完全子会社化を狙わなけば意味がない(その理由は紙面の関係で割愛するが、いつか解説する)。マクロンは、せっかく見逃してやったルノーの排ガス検査不正を攻撃してくるはずであるが、そうなれば株主代表訴訟で断固戦えばよい。

ルノーTOBには25%のプレミアムで2.6兆円、33%のプレミアムで2.8兆円の資金が必要となるが(15%はすで取得しているためそれぞれその85%でよい)、仮にルノーを取得できたとするとその中には1億8300万株(時価で1兆7300億円)の日産自動車株があり、これは日産自動車の自己株となる。これを世界中に売り出せばかなり資金を回収できる。それでも業績が急降下中の日産自動車にとっては大きな負担となるが、自己株を売り出すまでの我慢であり「日本の会社に戻ります」と宣言すれば増資でもかなりの資金が集まるはずである。しかし増資では時間が足りないため、つなぎ融資を搔き集めるしかない。金利を3%にしてもルノーなど株主に支払っていた6%の配当の半分である。ルノーが保有していた自己株には配当を支払う必要はないため、資金コストは大幅に低下するし、低金利に苦しむ地銀や機関投資家にとっても朗報となるはずである。

そして西川CEOも含めて現経営陣とゴーンの手先だった幹部社員には出て行ってもらうしかない。ちょうど産業再生投資機構なる機関が2兆円の国費を持ってスタートしたようなので、第一号の国策案件として中心に立ってもらえばよい。間違っても 絶対にベインなど外資系ファンドに任せてはならない。外資系ファンドや投資銀行にノウハウがあるというのは迷信で、ファンドならKKR、投資銀行ならゴールドマンサックス以外は二流以下ばかりである。そのKKRもヘンリー・クラビルが引退するようで、CEOが交代したばかりのゴールドマンもマレーシアの大スキャンダルでどうなるかわからない。昔最強と言われたソロモン・ブラザースが消滅してしまった時に似ているような気がする。つまり鬼の居ぬ間に洗濯ができることになる。

また就任直後(就任前?)に辞任した産業再生投資機構の9名の経営陣の中から、田中正明氏(三菱 UFJ銀行出身)をCEOにしたらどうかと思う。「俸給が年間1円でも引き受けるつもりだった」と公表しているので、その通りにやってもらいましょう。堂々と公表して業績インセンティブをたくさんつけてあげればいいのである。

ルノーTOBの最大の目的は、あれだけゴーンに「しゃぶり尽くされた」日産自動車の財産が、少しでも取り返せるかもしれないからである。ただトランプにだけには「米国に工場を建てて雇用を増やす」とコミットしておく必要があり、それで来年初めの日米通商交渉の目玉にもなるはずである。

「死んだ子供」と考えていた日産自動車が、日本の会社として帰ってくるかもしれないのである。

 

平成30年12月11日