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日産自動車ゴーン元会長の命運、日産自動車・三菱自動車の命運

| 個別企業編 | 日産自動車 | 2018年11月27日 |

日産自動車のゴーン元会長ら2人が東京地検特捜部に電撃逮捕された11月19日からちょうど一週間が経過した。ゴーン氏はその間に、日産自動車や三菱自動車の会長などすべての役職を解任されているが、自ら辞任しない限りそれぞれの取締役の地位には就いたままである。

報道各社は連日ゴーン問題を取り上げているが、いつものように「自称専門家」がお決まりの勝手なことを述べている。しかしここは冷静になって考えるべきことがたくさんある。

ここで何がゴーン氏の逮捕容疑になったのかを再確認してみると3つある。まず①2010年度~2015年度の報酬が100億円近かったにもかかわらず有価証券報告書には50億円弱しか記載していない。これはちょうどその2010年度から1億円を超える報酬を得た経営者の実名を公表することになった影響もあるはずであるが、問題はどの上場会社でも役員報酬の総額は株主総会の承認を得る必要がある。当時の(今も)日産自動車が正直に申告するとゴーン氏一人でその総額を大きくオーバーしてしまう。だから差額を退職時にまとめて受け取ることにしたようであるが、仮にそうだとしても将来の支払いが確定していれば会計上の経費に計上しなければならない。つまりこの時点で有価証券報告書には虚偽が記載され、そのまま継続しつつその額も膨らんでいったことになる。明らかな金融商品取引法違反で有価証券報告書の虚偽記載)である。ちなみに日産自動車の監査法人は、オリンパスや東芝にも登場する「あの」新日本監査法人である。

また今回の調査期間が2010年度~2015年度となっているのは、その後の2016年度~2018年度上期においても同じ容疑で再逮捕するためである。つまりゴーン氏は両方で最低40日間を小菅の拘置所暮らしとなり(たぶん接見禁止のままで)、クリスマスも正月も楽しめない恐れが強い。まあ拘置所でもクリスマスケーキや「おせち」や餅なども出るそうである。

確かに有価証券報告書の虚偽記載は形式犯で重罪ではないが、必ず有罪に持ち込める検察庁にとっては「魔法の杖」である。今回はそれが別件逮捕に使われたはずである。これだけならゴーン氏は3年程度の懲役(つまり執行猶予)で堂々と日本を去り、日産自動車も5~10億円の課徴金を課せられる程度であろう。ただここで有罪になると、犯罪で得た資金は全額没収されることになるはずである。ただどこにあるかが分からないと当然のように没収できない。

それでは検察庁が狙った「本当の犯罪」とは何だったのか? 検察庁も連日報道各社にレクチャーしているようで、ようやく各社の報道も揃ってきたが、②日産自動車がベンチャー投資を目的にオランダに設立した子会社に払い込んだはずの資本金60億円が、そっくりオフショアにある孫会社を経由してブラジルやレバノンなど世界各地の不動産に化けており、しかもすべてゴーン氏が私物化していたことである。これはその実務をやらせていた幹部(フランス人)と検察庁が司法取引をして重大調書が出来上がっており、完全なる業務上横領に問える。これは7~8年程度の実刑になるはずである。

さらに③私的な家族の海外旅行や、食事代や、勤務実態のない実姉にコンサルタント手数料を支払っていたとか、後から後から「悪事」が明らかになっている。これだけなら週刊誌的な報道であるが、検察庁の目的は違うはずである。このようにゴーン氏のネガティブキャンペーンを続けることにより、ルノー本社内にも反ゴーンCEOの機運を高めて解任させることと、最も重要なことは日本の株主の間にも反ゴーンの機運を高める必要があるからである。ゴーン氏はこれまでも日産自動車の財産をルノーのために大量に差し出していたが(6%近い配当など)、毎年の株主総会における賛成率は80%ほどもあり(ルノーの持ち株比率は43%強なので、かなりの日本人株主が妄信的にゴーンの経営を信用していたことになる)、これは今後予想される臨時株主総会前までに必ず是正しておく必要があるからである。

もともと移民の子でフランスではエリートでもなんでもないゴーン氏を、絵にかいたようにエリートのマクロン大統領は嫌っており、本年(2018年)にも解任するはずだった。ところが策士・ゴーンは「日産自動車の経営統合をやり遂げる」ことを条件にまんまとルノーCEOの任期を2022年まで延長させてしまった。トランプより低い支持率に苦しむマクロンは、何とか日産自動車を丸ごとルノーに取り込んで雇用を拡大させなければならず、そうなると日産自動車は日本の会社ではなくなり、当然のように大量の雇用と税収が日本から奪われてしまうことになる。日産自動車の株主は「どうやって取引するかもわからない」ルノー株式が割り当てられるだけである。ルノーの営業利益は日産自動車の半分以下しかなく、ジーゼル車の排ガス規制逃れも隠れているため、投資魅力は全くない。

さてこれからのルノー対日産自動車、さらにはフランス対日本の争い、さらには残った日本人の日産自動車経営者(西川氏のこと)の驚くべき思惑など書くべきことがたくさんあるが、紙面を使いすぎたため近々続編を書くことにする。

 

平成30年11月26日