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反サウジアラビア・ジャーナリストが殺害された?

| 政治・政策提言 | 事件 | 2018年10月19日 |

スポーツなど勝負事には必ず「流れが変わった」あるいは「ここから勝負が大きく動く」と感じるポイントが必ずある。今後の国際政治を考えると、10月2日に反サウジアラビアのジャーナリストであるジャマル・カショギ氏がトルコのイスタンプール総領事館を訪れた直後から行方不明となり、総領事館内で殺害された可能性が強いことが該当すると考える。

国際政治のバランスだけでなく、原油価格や世界の株価だけでもなく、まさに「ありとあらゆるもの」を大きく変化させてしまうと「直感的に」感じているわけである。

もちろん11月8日に行われる米国中間選挙で、トランプ政権の与党である共和党が勝つか負けるかも重要であるが、所詮トランプが勝てばどうなる、負ければどうなるなどは「今でも」ほとんど想像できている。

それに対して今回のカショギ氏殺害は(もう確定的なので「殺害」と書いていく)、ここからどこで何が起こるかを予想することが大変に難しく、展開によっては世界中が想像もできない大混乱に陥る恐れがあると「直感的に」感じてしまう。

「どうして?」とか「そんな大袈裟な」といわれそうであり、その辺を理論的に解説できる段階でもないが、とにかく理屈ではなく「直感的に」そう感じるのである。

サウジアラビアといえば、中東における親米の大国で、世界最大級の原油産出国でもあり、原油価格への影響力も大きい。そして高齢のサルマン国王に代わり、その実子のムハンマド皇太子(33歳)が内政・外交・軍事などほとんどすべての実権を握っている。

またムハンマドが叔父を追放して皇太子に昇格した直後の昨年(2017年)5月には、イランに近いという理由でカタールとの国交を断絶し、同年11月には王子や現職閣僚を含む数十名を突然に逮捕・監禁し、その資産をほとんど没収してしまった。その中にはシティバンクなどの大株主でもあるアルワリード王子も含まれているが、:要するに「やりたい放題」で、独裁体制を築き上げてしまっている。

そして今回のカショギ氏の殺害に、この独裁者であるムハンマド皇太子が大きく関与していたことが世界中で明らかになり始めている。カショギ氏も総領事館を訪れた際に「危険な状態に追い込まれる可能性がある」と認識していたようで、マイク機能(具体的にはアップル・ウォッチ)を身につけており、総領事館に入った直後に体を切断されて殺害された「音」がトルコ政府と米国諜報機関がすでに確保している。また出元は不明であるが「映像」まであるようである。

それに対してトランプ大統領の発言は、カショギ氏が殺害されたとは断定しない「煮え切らない」もので、ウォール・ストリート・ジャーナルなど反トランプのメディアが一斉に「詳しい状況」を報道し始めた。それでさらに状況が世界に拡散することになり、トランプにとっては明らかに中間選挙で不利になる。ちなみにサウジアラビアはトランプ大統領就任直後の最初の訪問国であり、その際に米国製の精鋭武器を1100億ドル(12兆円以上)も買ってもらったため批判ができない。

またサウジアラビア王室といえば、世界のイスラム教の中心と考えられるが(実際にメッカ、メディナなどの聖地はサウジアラビア国内にあるが)、現在のサウジアラビア王室であるサウド家は砂漠を渡り歩いていた部族の末裔でしかなく、開祖ムハンマドの直接の末裔であるヨルダン国王やモロッコ国王、それにイラン革命で帰国したホメイニ師などと比べればはるかに格下である。豊富な原油に支えられた「イスラム教のスポンサー」という位置づけにすぎない。

それではサウジアラビアとトルコの関係はどうなのか? トルコは中東の盟主だった旧オスマン帝国の末裔であり、馬賊が成り上がったサウジアラビア王室よりはるかに格上である。つまりトルコ政府が今後、カショギ氏殺害でサウジアラビアを擁護したり、証拠を隠すことも「絶対に」ない。すべて明らかになっていくことになる。

つまりサウジアラビア王室が(とりわけ33歳の若造であるムハンマド皇太子が)、もともと中東あるいはイスラム圏の盟主であるとは考えられておらず、さらに今後は世界が反サウジアラビアになる恐れが強い。

最後に、もしそうなった場合に最も悪影響を受ける日本企業は、言うまでもなくソフトバンクである。

 

2018年10月18日