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トランプ政権発足から2年弱

| 政治・政策提言 | 米国 | 経済編 | 米国 | 2018年8月28日 |

もし本誌が、何らかの事情で数年間意識が回復しないまま眠り続け、最近になって急に目覚めたなら何に最も驚いてしまうかというと、間違いなくあのトランプが米国合衆国大統領になっていることだと思う。
トランプは自ら建設したカジノホテルを4回も倒産させており、決して一流の経営者ではない。それなら一流の倫理観を備えた人格者であるのかというと、それはもっと違う。

そんなトランプが米国合衆国大統領になるためには、どんな「奥の手」を使ったのだろうと、真っ先に考えてしまうはずである。ロシアゲート疑惑の本質も、そのへんからきているような気がする。最近になって、一時期トランプ陣営の選挙対策委員長を務めたポール・マナフォートと、長い間トランプの個人弁護士を務めたマイケル・コーエンが「あっさりと」司法取引に応じ、トランプとロシアの関係などをかなり詳しく話してしまった可能性が強い。
もちろん現職大統領であるトランプには不逮捕特権があるが、その代わりに弾劾裁判が待ち構えている。弾劾裁\裁判とは下院議員の過半数の賛成では発議され、上院議員の3分の2以上の賛成で有罪(罷免)となる。仮にここで罷免されると不逮捕特権もなくなるため、一般人と同じように刑事責任を問われることもありうる。
過去の弾劾裁判は1868年にアンドリュー・ジョンソン大統領(暗殺されたリンカーン大統領の後任)と1998~99年のクリントン大統領の2例しかなく、両者とも無罪となっている。ウォーターゲート疑惑のニクソン大統領は、弾劾裁判の発議が確定的になった段階で辞任しているため弾劾裁判は開催されていない。

さてトランプ大統領の場合は、本年11月に中間選挙が行われ下院(435議席)の全議席と、上院の3分の1(今回は35議席)が改選される。下院議員は全議席が改選されるが、上院は全議席の3分の1今回は35議席)が改選されるが、その35議席のうち26議席が野党・民主党が議席を占めているため、常識的には弾劾裁判で有罪(3分の2以上の賛成が必要)となる恐れはない。

しかし下院は一発勝負なので、仮に野党・民主党が過半数を占めれば、すぐにでも弾劾裁判が発議される恐れもある。仮にそうなっても有罪(罷免)となる恐れはないものの、2020年11月の大統領選におけるトランプの再選もなくなり、一期目に早くもレームダック化が進むことにもなりそうである。

最近のトランプはとくに中国に対する通商・貿易戦争をますます加速させ、それ以外でもイランやトルコとの関係を悪化させている。もちろんそれらが11月の中間選挙対策(というより弾劾裁判の回避策)に有利と考えていたはずであるが、米国におけるインフレやコストアップによる米国企業の収益悪化の兆しが早くも見えてきている。しかし今更方針を変更する訳にもいかず、このまま突っ走るしかないはずである。

最近になってパウエルFRB議長が、利上げの早期打ち切りの可能性にも言及するようになった背景にも、通商・貿易戦争がさらに過熱すると米国経済にとっても(もちろん日本や発展途上国も含む世界経済にとっても)決してプラスにはならないと考えているはずで、どこかで金融緩和に再転換する必要も考えておかなければならないからである。

もともとトランプの経済政策は、減税や軍備拡充や大型公共投資などに頼る積極財政派であるため、現在の利上下やFRBの保有資産縮小をこのまま加速させることは難しいはずである。そうなると一気にドル安が加速してしまう恐れがある。どちらかというと「経済オンチ」であるトランプが、目先の中間選挙を有利にするためだけに安直な政策を繰りだしたりすると、こんどこそ米国経済だけでなく世界経済にとって(とくに下落するドルは)大きなリスクになってしまうはずである。

今年前半の世界の金融市場は概ね良好であったが、本年後半はそういうわけでもなさそうである。

 

平成30年8月28日