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日銀の国債保有を正確に考える

| 中央銀行・金融情勢・提言編 | 日本 | 2022年6月29日 |

日銀の国債保有を正確に考える

 日銀の国債保有残高(以下、すべて短期国債を除く)の総発行残高に占める割合が初めて5割を超えた。6月20日現在の国債保有残高が514.9兆円(額面ベース)に対して6月27日現在の総発行残高が1021.1兆円なので、単純計算で日銀が50.4%を保有している。

 世界のほとんどの中央銀行が利上げや総資産縮小に踏み切る中で、日銀だけは全年限の国債を買い続け、とくに10年国債利回りを0.25%以下に抑え込むため10年に近い年限の国債を指値オペで無制限に買い入れている。その結果、日銀は6月だけで(月末までの予定と見込みを入れて)16兆円以上の国債を買い入れる。過去のピークは2014年11月の11.1兆円だった。

 世界中で国債利回りが上昇する中で、日本の国債利回りだけが日銀の大量買い入れで低く抑え込まれているため、円安が加速しただけでなく(6月22日早朝に一時1ドル=136.71円と1998年以来の円安となった)、海外ヘッジファンドなどが大量の空売りをぶつけていたが、月末にかけては日本の国債利回りも落ち着きを取り戻している。

 日銀の6月20日現在のバランスシートは、総資産が国債の525.8兆円(ここは金額ベース)、ETFとREITが37.7兆円、金融機関への貸し出しの142.4兆円など742.3兆円(ただし日銀は外為勘定を除く保有資産の時価評価を行わない)、総負債が日銀券の119.6兆円、日銀当座預金の564.3兆円、引当金を含む資本勘定の11.1兆円などである。
 
 ところで日銀の大量国債買い入れを巡ってはいろんな意見が出ている。まず金利(国債利回り)が急上昇すると、日銀が債務超過になるというものである。

 そもそも日本は簡単にゼロ成長から脱却できないため、金利(国債利回り)が急に上昇することはない。たしかに日銀は保有国債を時価評価していないが基本的に満期まで保有するため、仮に途中で評価損となっても問題はない。3月末時点で日銀の国債含み益が4.3兆円あり、FRBの0.75%の利上げなどで日本の国債利回りにも上昇圧力がかかった6月中旬でも1.3兆円ほどの評価益が残っていたはずである(みずほ証券の試算)。

 ここで日銀の国債損益だけを考えると、金利(国債利回り)が上昇するより低下するほうが「はるかに」困る。マイナス利回りを含む低利回りで国債を買い入れることになるため、2021年度(2021年4月~2022年3月)に0.227%まで低下した日銀の保有国債利回り(加重平均クーポンに近い)がますます低下してしまう。

 これも大変に想定しにくいが「そこで」日本の政策金利が0.25%になると、現時点で保有国債残高より多い日銀当座預金への利息も同じ0.25%となるため、日銀の保有国債全体が逆ザヤになってしまう。

 それから日銀が国債の総発行残高の5割以上を保有していることに対する「漠然とした不安」がある。しかしこの最大の問題は日銀が国債を買い過ぎていることではなく、その代金が一向に市場に出ていかないことである。

 日銀が「異次元」金融緩和に踏み切る直前の国債保有残高が91.3兆円、総資産が164.3兆円、日銀当座預金残高が58.1兆円だった。そこから2022年6月20日までに国債保有残高が(金額ベースで)434.5兆円、総資産が578兆円、日銀当座預金残高が506.2兆円も増えている。

 つまりこの間の日銀当座預金残高は国債保有増加額の116.5%、総資産増加額の87.6%の割合で増加している。日銀が国債買い入れなどで「せっせ」と市場に供給した資金の大半が当座預金残高として日銀内に滞留している。日銀が「いくら」金融機関から国債を買い入れても、また金融機関に貸し付けても、その資金は市場(経済活動)に「ほとんど」使われていないことになる。というより日銀が「必要ない」資金を大量に供給していることになる。

 いったい「何の」ために?

 これは日銀が(主に)国債買い入れを通じて金融機関の預金を当座預金に積み上げ、その資金を(主に)国債を買い入れに使っていることになる。国債発行残高は毎年の財政赤字を積み上げたものであるため、日銀が買い入れても買い入れなくても発行残高はあまり変わらないはずである。ところがその国債発行残高の5割以上を日銀が買い入れている。

 つまり日銀が国債を「必要以上に」買い入れるので金融機関も市中から国債を「必要以上に」買い入れる。実際は2年、5年、10年の新発国債が中心となるが、とりあえず金融機関は手元資金(預金)から支払う。そしてすぐに日銀にその国債を売却するが、その代金の大半は日銀に預けたままである(つまり使わない)。

 ということは日銀が国債を買い入れなければ金融機関は市中から国債を買い入れる必要がなく手元資金(預金)も減らなかったはずである。日銀当座預金団残高に相当する金額は、本来なら金融機関は「使わなかったはずの」手元資金(預金)で新発国債を中心とする国債を買っていたことになる。

 これは日銀が国債に対する「需要」を作りだしたことになる。別の言い方をすれば日銀が国債に対する需要を「先食い」したことになる。ただ日本では資金需要が一向に盛り上がらないため、金融機関がその「先食い」した需要を解消する(日銀当座預金を引き出す)必要が「当面」ないだけである。

 そう考えていくと「何だか」不安になってくるが、そういう指摘を聞いたことがない。

2022年6月29日

 

 

The Stray Times(有料版)の予告   166回目

| 有料版記事予告 | 2022年6月26日 |

The Stray Times(有料版)の予告   166回目

 6月27日(月曜日)の夕方に予定通り更新します。以下、予定内容です。

1 特別特集 世界の物価・経済・金融市場は6月上旬から「新しい段階」に突入している

 掲題のように感じているが、まだ現時点ではそれぞれの動きがバラバラで整合性を欠いており、確たるイメージが掴めない。それぞれの動きに時間差と反応度合いの違いがあるからである。

 そこで今週は、その辺を出来るだけ分かりやすく整理して「新しい段階」のイメージを掴みたい。

 
2  今週の「注目すべき」銘柄   米国メディア業界の最新勢力図

 もともと変化が激しい米国メディア業界は、寡占が進む巨大メディア・グループを中心にアマゾンなど異業種からの新規参入やストリーミングなど新興勢力を巻き込んで、ますます競争が激しくなり再編が加速している。

 またどの企業も2022年に入ってから株価下落に見舞われている。そんな米国メディア業界の最新勢力図と「新たな勝ち組」を解説する。

3  お勧め「映画」コーナー

 久々にお勧めしたい「映画」があるので、米国メディア業界の最新状況も踏まえて解説したい。

2022年6月26日

最新有料記事サンプル


2022年6月27日配信分
お勧め「映画」コーナー

お勧め「映画」コーナー

 久々にご紹介したい「エピソード満載」の映画が上映されている。

 冷戦の最中である1986年に大ヒットした「トップガン」の36年たった続編である。トップガン(Top Gun)とはもともとエリートが集まる米海軍戦闘兵器学校のトップ卒業生のことである。米空軍は米陸軍から派生し…


2022年6月27日配信分
今週の「注目すべき」銘柄    米国主要メディア・グループと新規参入組

今週の「注目すべき」銘柄    米国主要メディア・グループと新規参入組

 もとも変化が激しい米国メディア業界は、寡占が進む主要メディア・グループを中心にアマゾンなど異業種からの新規参入に動画ストリーミングサービスなど新興企業も巻き込んで、ますます競争が激しくなり再編が加速している。


2022年6月27日配信分
特別特集  世界の物価・経済・金融市場は6月上旬から「新しい段階」に突入した

特別特集  世界の物価・経済・金融市場は6月上旬から「新しい段階」に突入した

 世界の物価・経済・金融市場は6月上旬から明らかに「新しい段階」に突入していると感じるが、現在はそれぞれの動きがまだバラバラで整合性に欠けている。

 それぞれの動きに時間差と反応度合いの違いがあるため、その辺…